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2.2. 基調講演 東京大学 家田教授

 

専門は、軌道、航空、海運、道路整備を含む交通計画・交通工学であるが、本日は、鉄道開発に焦点を置く。ハノイやHCMCなどのヴィエトナムの大都市は現在、オートバイによって圧倒されている。ヴィエトナムがモータリゼーションの最初の段階に入ったことを意味する。現状では、交通状態はそれほど悲劇的でも重大でもないが、遅かれ早かれ約10年以内にモータリゼーションの第2段階へ進展するであろう。それはオートバイの大部分が自動車に取って代わられることを意味する。オートバイの大部分が自動車に変わると、何が起こるであろうか?多分ひどい交通渋滞と公害に直面するであろう。将来のため、今何かをしなければならない。

組織化されたバスやバンなどのフィーダーサービスと強力な都市整備政策とTDM(交通需要管理)を組込む事が可能な鉄道システムは、効果的な選択肢の1つであり得る。世界のほとんどすべての大都市で、鉄道システムが整備されるべきであることは周知の共通理解である。しかし、同様に鉄道整備が容易ではないことも周知の事実であり、鉄道整備に際し、財務や運営システムを十分考慮する必要がある。何をなすべきは明らかであるかもしれないが、実施方法に関しては多くの時間を割かなければならないであろう。実施方法としては、官民のパートナーシップを提言する。

このプレゼンテーションでは、はじめに鉄道について述べ、次に手法について、最後に日本の官民のパートナーシップに関しての事例を述べる。

最初に都市鉄道システムの事例をいくつか示す。上の図はマストランジット高速郊外型コミュータ鉄道システムである。下の写真はシンガポールにおける都市内短距離移動の地下鉄の事例である。

大都市の都市鉄道の役割は都市を道路交通渋滞から救い、より良い環境を提供し、そして経済的にも効率的な都市構造を構築することにある。

鉄道システム整備は3つの段階から成る。計画、建設、建設後(管理または運営)。これらすべては重要であるが、ここでは、2番目の建設に焦点を当てる。

建設段階前に、技術問題、環境対策、建設に対しての民間・市民との合意形成、財務計画、建設用地の長期的合理的な補償、効率的な管理組織などのチェックポイントがある。大部分が財務と組織的な性格に集約される。そのために論争が長期化することもある。あるものは官業が良いと言い、別の者は民業が良いと言う。

日本を含めた世界の肯定的、否定的な経験から、PPP(官民パートナーシップ)が最良の方法か、最良の解決策である見られている。なぜPPPであるか?第1の理由は、民間は利潤追求活動で、通常経済的な好結果をもたらす。第2に、公共部門の責任は安全、環境等の杜会的配慮に対して今だ重要であると考えられるからである。双方の協調がしばしば好結果を生み出し、事業リスクを軽減し、事業の財務的な魅力を改善するのである。

 

 

 

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