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不法事業者の存在

EDSAで運行する不法バス車両は、正規車両約3200台に対して3000台存在すると推定されている。彼らは警察、運輸系公務員に賄賂を渡すことで事業を存続させている。中には、警察関係者が自ら運行しているケース、LTOの取締のない深夜、早朝、昼食時にのみ営業する者もおり、悪質である。被害を受ける正規事業者は不法事業者の見分け方を自ら考案し、LTOにレクチャーしている。

 

生き残りをかける民間事業者

MMTCの解体以降、メトロマニラのバス事業はすべて民営であり、ほとんどがバス所有数10台程度の小規模事業者である。都市内バス事業環境は非常に厳しく、事業者は組合を作り間接費の削減に取り組んでいる。しかしながら、車両価格、部品価格、人件費の上昇に加え、最近の原油価格の高騰で、小規模事業者は大ダメージを受けている。この上に、競争相手であるMRTの低価格サービス、エア・クオリティ・アクトヘの対応、シートベルト法の導入で更なる負担増を求められている。更に将来、自動車重量税に導入に関する検討も進められている。このように民間事業者を取り巻く経営環境は極めて厳しい状況にある。

組合は不法事業者に関する調査、料金規制に関する影響分析、バス停の利用方法提案などを独自に行い、行政側に都市内バス市場の改革を訴え続けている。

 

MRT3号線開通に伴なうEDSA通りのバス事業への影響

フィリピン政府は2000年度から「公共交通の促進」を政策目標の一つに掲げた。慢性的な渋滞に悩まされていたEDSA通りでは、MRT3号線の開通に伴ない、バスの乗客がMRTへ転換し、渋滞緩和の兆しがある。

この背景として、料金設定が大きく影響している。既存のバス交通からの転換を図るため、(時限的であるが)MRTの運賃はエアコンバスと同程度に設定されている。このため、客を奪われたエアコンバスは、運行車両数、事業者ともに減少しはじめている。

メトロマニラでは、この他に不良バスの取締の強化、バスレーンの整備などを2002年度末までに実施して、EDSA通りの交通環境改善に取り組んでいる。この一方で、バス事業者組合は、MRTの料金設定を不当として現在の3倍程度までの値上を要求している。

 

交通結節点の整備

メトロマニラのバス事業規制では、バスターミナルは民間事業者によって整備されるものと位置づけられている。結果的に、小規模のバスターミナルが分散している。

公共によるバスターミナルの整備は、Provincial Bus(地方行きの都市間バス)用のみ計画されている。バス停は道路インフラの一部であるため公共側に整備責任があるが、MRT駅との連携は進んでいるが、バス停周辺の混雑緩和に資する整備は進んでいない。

 

イニシアティブを握る民間事業者

大規模事業者の中には、厳しい経営環境の中なんとか生き残りをかけようと整備・経理の合理化、車両の自社生産など企業努力を続けている所がある。一部には、車内に計画部を設け、路線の開設、既存路線の改良に関して行政側に先駆けて提案する能力のある企業も育ってきている。また、土地開発事業者でも宅地開発地にスケジュール運行のバスを自主整備する例も見られる。一方で、行政側は運行情報・フランチャイズ状況なども組織間で共有できず、管理能力に欠ける。

 

 

 

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