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4.11 問題点のまとめ

Good Governanceのための事業者管理、事業者との連携

ジョホールバルの都市内バス事業は民間企業が中心となって展開しているが、バス事業全体は高いレベルで公共側により管理されている。これは、1995年の小規模民間バス企業7社の大合併が好例である。また、このような管理形態を維持するために、2〜3ヶ月に一度の事業者・行政間の連携会議を開催し、行政が事業者と公共交通問題を共有している。

 

複雑な管理組織

バス事業者の統合を実現した一方で、公共側の管理組織は複数存在する。特に、国レベルから州、市レベルまでの組織、政策決定がバス事業計画に複雑に絡み合っているため、政策に一貫性がないとも言える。

連邦政府は非常に強力な権限を持ち、その直轄事業は往々にして下位行政機関の計画と調和しない。連邦政府はJB都心近くに経済特区を設けようとする構想を持っているが、JB市が作成したマスタープランと重複するものである。これは都心部でのバス路線設定にも影響すると考えられる。

市レベルでは都市交通問題の共有を図るため連携会議が実施されているが、専門的にバス行政を行っている組織はない。また、州政府が公営バス事業者に出資しているためバス会社の完全な統合実施されていない。

 

民間事業者による公共交通計画

代表的なバス事業者のTransit Link社は、合併に先立って、合併計画、合併後の路線統合、将来の路線計画、LRT導入計画などの公共交通マスタープランを独自で作成した。このようなマスタープランは本来行政側であれば行政側が主体となり、公共の視点から総合的に検討した上で策定すべきものであるが、行政は一切関わっておらず、また、作成する能力にも欠ける。

 

車両の古さ

Transit Link社が所有する車両は、合併後各社が持ちよったものである。現状、500台中200台は故障しており、状態は悪いが運行可能な車両を営業にまわしている場合も少なくない。サービスレベルまで言及していないため、車両は非常に古く、ドアを開けたまま営業している場合もある。合併に関連するマーケティングのための投資(塗装の統一、乗車カード導入)が優先され、車両の安全性は重要視されていない。

 

シンガポールの影響

シンガポールの中心部から車で僅か30分のジョホールバルは、シンガポールの影響が非常に大きい。シンガポール市場に近いという強みもあれば、物価の上昇、交通流入などの負担を生じている。JBのバス交通関係者はシンガポールの交通システムを熟知しているが、国レベルの規制の影響力が強く独自性を打ち出せないでいる。

 

 

 

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