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第2章 対象国の概況

 

2.1 ベトナム社会主義共和国

インドシナ半島の東側に位置し、海岸線が3,000kmにも達する南北に細長い国土を有する。ハノイを中心としたホン河流域、ホーチミンを中心としたメコン河流域並びに海岸線に平野が広がるものの国土の大部分は山間部が占めている。気候は、概ね5月〜10月が雨期、11月〜4月が乾期に分かれ、北部は熱帯湿潤気候、南部は熱帯モンスーン気候に属す。

国土面積は325,500km2(日本の約10分の9)で、人口が約7,700万人である。首都ハノイは政治の中心であり、ホーチミンはこの国第一の都市で経済、貿易の中心となっている。ベトナム人が9割を占め、公用語はベトナム語、宗教では仏教徒、カトリック教徒が多い。ハノイには日本大使館、JICA事務所が置かれている。

社会主義国であるが、1986年より「刷新(ドイモイ)」路線を打ち出し、市場経済原理の導入等経済を中心とする開放化を進めている。低所得国に分類されるがGNPも年々増加(1997年の名目GNP総額は240億ドル)しており、対外債務の残高も減少してきている。しかし、1992-97年の平均GDP成長率が約9%であったが、アジア経済危機の影響を受け、1998年の実質GDP成長率は3.5%に低下した。戦争や投資不足による基礎的な社会経済インフラの未整備が経済発展の障害となっており、社会経済インフラや農業基盤の整備、市場経済に適した法制度の整備、人材育成、都市・農村間の格差是正、各種不正行為の防止等が経済的課題である。産業は農業が中心であり、総労働人口の70%以上が農業に従事している。ハノイ、ホーチミン等の大都市では、人口の増大、都市化が進み交通渋滞等の問題が生じている。

対外関係では、我が国を含む西側諸国や中国との関係改善・拡大を望む政策をとっている。1995年1月にWTOに加盟申請、1995年7月にASEANに加盟、1998年にAPECに加盟し、米国との関係改善も徐々に進展してきている。外国からの投資は、1996年約85億ドル、1997年約45億ドルであり、主要国は、台湾、香港、日本、シンガポールである。また、我が国との関係では、1992年より本格的な関係強化が進められた。日・ベトナム間の貿易は、近年は着実に拡大しており、ベトナムからは原油、海産物、繊維製品等、日本からは自動車、バイク、機械類等を輸出する。経済関係の拡大に伴い、日本企業の進出が相次いでいる。

我が国からの開発援助では、1991年10月のカンボジア和平合意以降、円借款を再開し、人造り・制度作り、電力・運輸等インフラ整備、農業・農村開発、教育・保健、環境を援助の重点分野としている。1998年には、ベトナムに対し、支出総額で3.88億ドル(我が国国間援助の第6位)、98年までの累計で総額15.32億ドル(同13位)の支援を行っている。

有償資金協力では、道路、港湾、電力等の基本インフラに加え、今後は環境、上水道等の社会インフラの整備を対象とし、1998年には中小企業等育成支援等、総額880億円の円借款を供与した。無償資金協力では、病院、教育施設の改善、農業分野等への協力を中心に実施しており、1998年に経済構造改革支援として20億円のノンプロジェクト無償資金協力を実施した。技術協力としては、行政分野、市場経済関連分野、職業訓練関連分野、保健・医療、農業、教育、植林分野の協力を行っている。1997年12月の「日・ASEAN総合人材育成プログラム」に基づく、人造りの面での協力を推進している。また、1995年度から「対越市場経済化総合政策支援」、1996年度から法整備のための「重要政策中枢支援」、1998年度の「人材協力センター設立のための調査」、途上国の女性支援等のソフト面での協力を推進するための開発調査またはフォーラムの開催を実施している。

 

 

 

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