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次ぎに実際にどうやってプロジェクトを選んでいくかということですが、さきほどの目的系図のグループ化を行い、その手段、目的の枝を見ながら、類似したものをアプローチするという形でグループ化を行っていきます。それにひとつの名前を付けるというような作業をやります。それからアプローチというものをいくつかの判断基準で比較検討し、最終的にプロジェクトを選定していきます。実際にどうやって選ぶかという基準は、住民のニーズ、優先度、投入金額、技術、直接的な効果、環境への影響、達成可能時期、援助方式などがあります。鉄道に関する開発プロジェクトのアプローチをさきほどの選択基準で考えると、ひとつめは軌道を改良するアプローチ、2つ目は車輔を改良するアプローチ、3つ目は駅へのアクセスを改良するアプローチ、4つ目は鉄道の維持・修繕といった技術を向上させるというアプローチ、以上4つのアプローチが考えられます。この中の直接的な効果として、実際には軌道を改良することにより鉄道の事故が減るであろう、鉄道の速度が上がるであろう、鉄道のキャパシティが上がるであろうということが挙げられます。次にバスの開発プロジェクトとして、バスの運ぶ能力の向上、バス停、バス専用レーンの整備、バスの修繕・修理のメンテナンスの技術の向上、環境のマスタープランを作るといった考え方もあります。本来であればどのアプローチをやるかという選択の必要がありますが、今回はひとつの案ということで別に優先順位もなくいくつかのものをとりあげてPDM(プロジェクト・デザイン・マトリックス)といったものを作成しています。PDMには、なぜプロジェクトが実施されるかという上位目標、何をプロジェクトの目標にするかというプロジェクト目標、どのようにして目標を達成するかといった成果・活動、プロジェクトを実施するために何を投入するかといった外部条件、何をもってプロジェクトの達成条件を計るのかという指標・指標デタ入手条件、プロジェクトを開始するためにどのような条件が満たされる必要があるかという前提条件などがあります。具体的には、現在の軌道を改良する、駅の施設を改善する、一部は新たな軌道を導入する、将来的になりますが電化施設を整備する、信号・通信施設を整備する、車両基地を整備する、運行計画を立案するといった活動が必要とされます。実際にこれを行う前提条件としては円借款、そういった新しいものの確保、プロジェクト自体のフィージビリティ(実現可能性)の確認、電力のコンスタントな供給の確保、土地の確保のこの4つが確保できないと実現できません。

次は鉄道へのアクセスを改良するアプローチです。これも上位目標として大気汚染の改善、鉄道のサービスの改善、実際の成果としては駅への鉄道へのアクセスを改善するといのが上位目標、プロジェクトの目標、成果としてあります。

実際にどいうことを行う必要があるかというと、新しく駅前広場を整備するということ、その中にバスのターミナルを整備する、アクセスするバスのルートを整備する、駅舎自体を新しく整備する、プラットホームヘ行くための橋を整備するといったようなことをやる必要があります。このPDMというのはプロジェ外を立案する段階、実際実施する段階に非常に重要な位置付けにあります。

最後にまとめにはいります。今回一つの案として提案したものは、現状の交通状況データ、将来の人口配置計画等に制約があり、十分な調査・分析が行われたとは言い難いため、総合的な都市交通マスタープランを立案する必要があると思います。また、「上位目標―大気汚染の低減」を実現するためには、道路の改良、車輌の改善等別視点からの分析が必要であります。したがって、これらの別視点をも網羅した総合的な「都市交通マスタープラン」の策定が望まれます。

次ぎに、都市交通マスタープランを策定するためにはその入力条件となる、ゾーン毎の人口、労働者数、自動車保有台数等の「将来の都市活動データ」が必要です。そのためにはヤンゴン市の将来の都市像を明確にする「都市開発計画」を作成することが必要であります。具体的には都市構造、都市開発、都市保全の方針、土地利用計画、人口配置計画の方針、計画を策定する必要があります。

また、信頼性の高い都市交通データについてですが、将来の都市交通需要を予測するためには精度の高い交通モデルの構築が不可欠となります。良い交通モデルは、現状の交通施設と現状の交通需要(流動)を基に作成されますが、精度の良い交通モデルを構築するためには精度の良いデータが要求されます。

 

 

 

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