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このため、将来どのような交通問題が発生するかを想定するためには、JICA STRADAというコンピュータによる交通予測システムが利用できます。JICA STRADAはJICA(国際協力事業団)により1995年に開発されたもので、主な機能としては交通データベースを作成すること、将来交通需要を推計することであります。

交通データベースの作成は、まず最初にゾーン図を作成する必要があり、ヤンゴン市の例を挙げれば、ゾーンは33のタウンシップとし、ゾーン毎に人口、労働者数を入力します。次ぎに交通ネットワークのデータベースとして鉄道網とバス網を対象として、そのルート、バス停、鉄道駅、運行頻度を図面を使って入力します。

将来の交通需要を予測するためにはモデルを作る必要があり、般的にJICA STRADAの中でよく利用されている4段階推計法によりモデルを作成しています。これは、ゾーン毎に何人の人がそこから出発するのか、また何人の人が到着するのかという発生集中モデル、どのゾーンからどのゾーンに移動するのかという分布モデル、どの交通手段を利用するかという分担モデル、どのルート、道路を利用するかという配分モデルからなります。このモデルにより発生集中交通量を予測すると、2000年度では全体のバス鉄道利用者は約280万人、それが2020年には2倍の約560万人に増加するという予測になっております。次ぎに、分布交通量の予測において、2000年と2020年でどのゾーンからどのゾーンヘ移動するかという予測を行っております。次ぎに鉄道の配分交通の予測ですが、鉄道利用者は2000年には73000人でありますが、2020年には約3倍の25万人に増加するという予測になっております。駅の乗降客数を丸印の大きさで表すわけですが、将来は多くの駅で利用者が増える傾向にありますが、特に市の中心部で利用者が増える傾向にあります。次ぎにバスの配分交通の予測結果ですが、バス利用者は2000年の270万人が2020年には約2倍の530万人に増加する予測となっております。これもバス停毎の利用者の数の大きさを丸印の大きさで表すわけですが、市の中心部で利用者が増える傾向にあります。

次ぎにこういう予測結果から将来どういう交通問題が起こるかという予想です。まず、バスの輸送能力と道路の著しい渋滞が予想されます。バスや会社のバスを利用する人数が2000年の2倍、530万に増加し、乗客の輸送に必要なバスの車輌も2000年の6800台から2020年には26600台になる予想です。また、交通量の増加により道路の著しい渋滞が予想されます。次ぎに鉄道輸送に関してですが、全体としては7万人から25万人と約3倍に増加し、現在の速度、運行頻度ではこれに対応することは困難であります。将来的には5分間隔の列車の運行が必要あり、また、車輌の増加、運行本数の増加も今の軌道のみでは限界があり、線路容量そのものが不足することが予想されます。

以上、問題系図を使った現在の交通問題、JICA STRADAを使った将来の予測結果を受けて、目的分析を行います。これは、将来問題が解決されたときの望ましい状態とそれを導く手段、目的の関係を明らかにし、それを目的系図というわかりやすい形で整理する作業です。具体的には問題系図の表現を否定的な表現から肯定的な表現に書き換えることでひとつの問題ケースというものを作ることが出来ます。問題系図と同じようにターゲットグループを「鉄道バスの利用者」、中心目的を「鉄道、バスの利用が便利である」と設定します。また、上位目標の設定として、「大気汚染の低減」を大きな目標として掲げてあります。上位目標とは目的系図の「中心目的」より上位に位置する目的で「中心目的」が達成されることで起こるプラスのインパ外で、より長期的な視点からの目標です。今回の調査において上位目標を達成するためには、公共交通を便利にして利用者を増やし、自家用車の利用者が減るというのと別に他のふたつの視点が必要になってきます。それはひとつは道路を改良して車のスピードを上げてやるということ、もうひとつは燃料の質の改善、また車輔の大気汚染を低減するための装置、こういったものを整備して、1台の車から出てくる大気汚染の量を減らす事はできます。

 

 

 

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