1. まえがき
従来の研究成果活用に関する調査では、追跡評価委員会の5部会が、自部会に属する個別研究課題を取り上げて実施してきた。今回は個別課題でなく、広く安全確保に関する研究成果活用の調査を行うことが決定され、部会を横断的に運営するため、研究成果活用状況調査部会が設けられた。調査日程は平成12年度(予備調査)と平成13年度の両年度である。
船舶・海洋構造物に関する技術研究を広義に解釈すると、その大半は「安全性」に関係する。即ち、海難を防止するために様々な形で多くの研究が行われてきた。その結果、海難事故が克服されつつある分野もあるが、海難事故は今も後を絶たない。その原因は、老朽船やプレジャーボートの事故など、社会情勢の変化に起因する事故が漸増していることにある。
安全性を広義にとらえて調査することは重要であるが、範囲を広げすぎると短期間にまとめることは難しいので、本調査は次のような範囲で実施することとする。
(1) 調査の範囲
日本財団の補助を受けて行われた造船研究協会(SR、RR)と日本海難防止協会の研究のうち、船舶の安全性に関する研究を対象とする。
(2) 調査方法
1) 研究の背景
安全性研究の背景には海難事故がある。主な海難事故を調査し、研究動機を明らかにする。
2) 研究の分類
研究の対象となっている技術を技術区分(設計・建造と運航及び管理など)、事故区分(転覆、浸水、火災など)、研究目的区分(事故の対処、予防、新技術開発など)に分類して、研究の対象を明らかにする。
3) 成果の調査
研究成果が安全性の改善に反映されていることが明白な例は、規則や基準或いはマニュアルなどに成果が採用・参考にされることであるが、設計や規則の運用又は船舶の運航などに利用されている場合もある。これらを広く調査するために、必要に応じアンケート調査などを考慮する。
以上の基本方針に基づき、平成12年度は予備調査として、過去50年間の日本周辺の海難事故とその統計的特徴、技術研究課題の整理・分類、規則等に対する研究成果の反映、数例の事故に対する対応などを調査する。