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2.2.4 既存船適用時への対応

2000年1月1日より前に建造された船舶(既存船)に搭載されるディーゼルエンジンに「実質的改造」があり第13規則の規制対象船となった場合あるいはエンジンの改造により規制対象船となる可能性がある場合の対応策について検討した。

 

(1) 既存船に搭載されるディーゼルエンジンへの適用に関する規定

附属書VI第13規則およびNOxテクニカルコードには、既存船に搭載されるディーゼルエンジンに対し第13規則が適用される場合が規定されている。これによれば2000年1月1日以後に「主要な改造」が行われる出力130kWを超えるディーゼルエンジンとなっており、「主要な改造」とは、新エンジンとの交換、10%を超える出力の増加および「実質的改造」を指す。ここで「実質的改造」は「簡易計測法により確定された現状の排出特性を、規定された許容値を超えて増加させるようなエンジンの改造を意味する。この改造には、これに限定されるものではないが、その運転や技術的パラメータ(例えば、カムシャフト、燃料噴射装置、吸気装置、燃焼室形状の変更又はエンジンのタイミングの調整)における変更を含む。」と定義されている。

従って、既存船に搭載される出力130kWを超えるディーゼルエンジンも、NOxテクニカルコードの規定に該当する実質的改造を行った場合には、附属書VI第13規則の適用を受けることになり、該当するNOx排出制限値に適合させる必要が生ずる。しかし、NOxテクニカルコード等には既存船に実質的改造がある場合の詳細については明記されておらず、具体的な手続や対応方法も明示されていない。そこで、既存船が第13規則のNOx排出規制対象船となる場合を予想し、その過程において発生すると考えられる対応方法や問題点について検討した。

 

(2) 既存船の改造に関する技術的対応策

エンジンの改造は、主として燃焼改善の目的で改造が行われる。一般的に燃焼改善とNOx排出率は相反する関係にあると考えられており、燃焼改善対策を実施することにより、NOx排出率は増加すると考えて良い。「実質的改造」の対象となる既存船は船齢20年を超える場合も少なくないが、船齢等により対応の難易度は大きく相違する。ここではエンジンの製造時期等により次の3つのケースに分類した。

1) 同型エンジンが既に第13規則の規制対象エンジンとなっているエンジンではエンジン本体の改造や調整のみによる技術的対応は可能である。

2) 同型エンジンは第13規則の規制対象エンジンとなっていないが、生産が継続されているエンジンでは、陸上の実機においてNOx排出率に関連するパラメータ設定のための試験を要すが、技術的な対応は可能である場合が多い。

3) 既に生産が中止されているエンジンでは、エンジン本体のみの改造や調整による対応は困難であるが、NOx低減装置の付加により対応可能である。

 

(3) NOx低減装置

エンジンの改造や調整のみでNOx排出規制値を満足できない場合は、NOx低減装置により対応することが出来る。ここでは既に実用化されている、選択接触還元法を用いた脱硝装置(SCR)、エマルジョン燃料(水エマルジョン燃料)および水噴射を用いたNOx低減装置について調査した。

 

 

 

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