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(表彰)

 

操船シミュレーション技術の開発・実用化

高品純志

 

(社)日本造船研究協会殿のご推薦をいただき、「操船シミュレーション技術の開発・実用化により造船技術の向上に寄与した」として、平成12年7月20日海の日に栄誉ある運輸大臣表彰を授かりました。関係各位のご協力に深く感謝する次第です。ここに、開発内容の概要をご紹介させていただきます。

 

1. 操縦シミュレーションシステムの開発

昭和40年代からのタンカーに代表される船舶の大型化、さらにはコンテナー船、LNG船、RO/RO船等の船舶の多種多様化により、海上交通の安全性と関連して造船設計において、それら船舶の旋回性能、保針性能あるいは緊急停止性能といった操縦性能を正しく把握、確認することが重要な課題となってきました。当時は、主に自由航走模型試験により実船操縦性能を予測していましたが、模型/実船間の縮尺影響の問題が本質的に存在し、かつ模型試験では時間的にも費用的にも大きな制約があるため、これに代わる合理的な手法が必要となってきました。そこで、当時研究が進められつつあったシミュレーション技術に着目し、基本設計段階で使える実用的な操縦シミュレーションシステムの開発に着手しました。まず、九州大学と共同で10隻の各種実用船型を対象にして喫水、トリムをパラメータとする系統的な操縦流体力計測試験を実施し、船長、幅、喫水、方形係数、トリム等の船体主要目から操縦流体力微係数を推定する実用的な方法を開発しました。この方法は流体力微係数推定法のプロトタイプとして、現在でも一般に利用されています。この流体力微係数推定法、舵力推定法、さらに横傾斜や主機特性の操縦性能に及ぼす影響なども取り込み、初期設計段階で与えられる最低限の船型情報から十分な精度で対象船の操縦性能を予測できる操縦シミュレーションシステムを開発しました。図1には本システムによる計算結果と実船試験(旋回試験)結果の比較を示します。本システムの開発により、船の航行安全性に深く係わる操縦性能が、初期設計段階において合理的、多角的かつ簡便に検討できるようになりました。

 

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図1 シミュレーションと実船試験結果の比較

 

2. 港湾域における操船シミュレーション技術の開発

昭和50年前後から環境汚染に重大な影響を及ぼすタンカーの海難事故が相次ぎ、船の航行安全性に対する社会的要請も高まってきました。

 

※ (株)三井造船昭島研究所事業統括部 副統括部長

 

 

 

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