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(展望)

 

最近のコンテナ船大型化の動向

―大型化の要因と問題点等―

 

長塚誠治

 

はじめに

1990年代末におけるアジア諸国の予想以上に回復した経済発展とIT革命等によって、世界の産業構造が、著しく変化し、アメリカとアジアを中心に修復された世界経済、そして海上貿易すなわち、エネルギー資源の石油や石炭、産業原材料の撒積貨物そして製品や雑貨のコンテナ貨物の荷動き量が増大した。そして、この荷動きの増大が船腹需要を増加させたため、特にコンテナ船の建造需要は、船型の大型化とともに2000年秋の現在も依然として続いている。

その背景には、世界的な定期船業界の大型船社間のアライアンスや運航コスト削減を目的とした企業の構造改善が促進され、荷動きの増加とともに運賃が修復され、海運市況が好転していること等がある。

そこで、このような環境を背景に、過去数年の間、異常に進展しているスケールメリットを目的としたコンテナ船の大型化が21世紀に向けて、今後さらにどの様に進展し、何が問題点であり、どの様な変化が出てくるのか等についてつぎに述べる。

 

1. 定期船業界の経営環境の変化

(1) コンテナ貨物の量と流れの変化

1980年代半ば以降のアジア経済の著しい発展により、世界のコンテナー貨物の港湾での取り扱い量は1986年以降1990年代を通じて、急速な増加を見せている。とくに、日本や欧米の先進経済国から資本と技術の移転を受け、豊富で安い労働力によって、各種産業を発展させて来た韓国を含めた東南アジアの発展途上国は、国際的な輸出価格での競争力を得て、輸出量を増大してきたのである。さらに、先進経済国が、これらの国々で生産する製品の質と量の向上を促し、一層の生産量増大を促進した結果、国際的な主要生産地域となった東南アジアからの製品や半製品の輸出入量は増大している。その為、2000年現在、コンテナ貨物のアジアから世界に向けての海上荷動き量が著しく増加し、コンテナ船の運航需要量も増大しているのである。

海上貿易の中心は、過去数十年の長期間、環大西洋の時代であったが、1980年代から環太平洋の時代へと変化をみせ、特に1990年代に入ると、製品や半製品等のアジアを中心とした乾貨物の発着量が著しく増大している。その結果、世界の港湾でのコンテナ取扱量は、アジアを主体に増加し、1975年の約17.4百万TEUに較べ、10年後の1985年には約55.9百万TEUへと年平均約10%の伸びで増加した。そして、さらに10年後の1995年には約137.2百万TEUと年平均約8%の伸びで増加し、1999年には、約181.3百万TEUに増大した。

この様に、アメリカとアジアの経済発展やIT革命にともなう輸出入貿易量の増加は、21世紀直前の2000年における世界のコンテナ貨物の港湾での取り扱い量を対前年比率約7%で、さらに増加させるものと見込まれている。

その内、日本を除くアジア8カ国のコンテナの港湾取扱量は、1975年の約1.9百万TEUから、1985年には、年平均約19%の伸びで約10.4百万TEUへ増加し、その後の10年間も年平均約17%の伸びをもって、1995年に約49.4百万TEUへ増大した。

 

※ (財)海事産業研究所 上席研究員

 

 

 

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