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図1 解析対象の例

 

ここでは簡単のために金属は2種類としているが、3種類以上でも同様に取り扱うことができる。

(1)のラプラス方程式は、定常熱電導の問題や非圧縮性流体の渦なし流れの問題でなじみの深い偏微分方程式であるが、アノードおよびカソード上の非線形境界条件式(4)および(5)が異種金属接触腐食およびカソード防食問題の特徴となっている。式(1)を境界条件(2)〜(5)の下で解けば、金属表面近傍の電位および電流密度分布を知ることができる。

この境界値問題は有限要素法、差分法、境界要素法等の数値解析手法により解くことができる。腐食解析では物体表面の物理量が重要なこと、開領域問題が頻繁に現われることから、解析には境界要素法が最も適している。境界要素法の通常の方定化3)に従い、式(1)より境界積分方程式を導き、次に境界を多くの要素に分割し、φとiをそれぞれの節点における値と内挿関数によって近似すると、次の代数方程式が得られる。

κ[H]φn=[G]in (6)

ここで、φnおよびinはそれぞれφとiの節点における値を成分とするベクトルであり、行列[H]および[G]は境界の形状・寸法により決定される行列である。

 

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図2 支配方程式と境界条件

 

境界条件式(2)〜(5)を考慮すると上式中のφnまたはin成分の中には既知のものが含まれている。既知の成分を右辺に未知の成分を左辺に移項する(Γ3a3c上の量に対してはinの成分を左辺に、対応するfa(i)およびfc(i)を右辺に移項する)と、式(6)は次式のような形に変形できる。

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ここで、bi(i=1、2、…、γ)はΓ12上のφnまたはinの既知の成分の値、xi(i=1、2、…、r)はbiに対応する未知量である。ii{(i=1、2、…、3)はΓ3a3c上のinの成分を表し、fi(ii)(i1、2、…、s)はi(iiに対応するfa(i(iiまたはfci(iiを表す。式(7)は非線形代数方程式系を形成しているので、繰返し計算(例えばニュートン・ラフソン法)によってxiおよびiiの解を求める。

 

3. 複雑な構造物の解析に対する解析上の工夫

一般に使用されている機械や構造物は複雑な形状を持ち、置かれる環境も複雑である。数多くの細長い部材からなる海中油田用プラットホーム、数千本の管からなる熱交換器、あるいは、場所によって電気伝導度が複雑に変化する土壌中に埋設されたパイプラインなどがその代表例である。このような機械・構造物の異種金属腐食やカソード防食の解析に境界要素法を適用しようとすると、原理的には可能であっても、要素分割の労力や計算時間の点で、実際には実行不可能となる場合がある。

 

 

 

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