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但し、武家へ商船構いなく勝手に売り渡した場合は、商船の役銀高が減少することから前々から制限をしているところである。

3] 川船改方の注意事項

「川船改方の儀覺」として、川船改方に対する注意事項も定められている。この場合、水戸藩が近いことから、御三家について特別扱いをする規則が定められている。

*御三家の手船並びに商船、猟船等を船改めする場合は、合印を請取って置いて、改めること。

*御三家の手船並びに御領分の商船を買い取って、公儀の極印を願う時は、御三家の極印を切抜いたものを船に添え、見分を請けた上で、極印を打つ。御年貢を定める手続きは新船に準じて行う。

*日除け戸障子の入った役船(武士しか使えないもの)は、三十艘と規定されており、焼印の札を渡し、商人に持たせておき、御用役船の時に差出させる。

*御用のために日除け戸障子の入った役船は、御目見以上の武士が乗った場合は水主三人を乗せ、御目見以下の武士の場合は水主二人を乗せるのが定めである。

4] 火災の節差し出す役船等

「火事之節所へ差出候役船之覚」として、火事が発生した場合、橋を守ったり、避難する人達の渡しのために一定の舟を役船として出すことが定められている。また、納められた役銀の用途についても、この中に定められている。

*次の通り役船を差出すこと。

日本橋へ 6艘

江戸橋へ 6艘

新大橋へ 20艘

(内8艘は火消し御用のために御先手へ渡し、12艘は渡し船)

両国橋へ 20艘

(内訳は上記に同じ)

浅草御厩河河岸場へ 10艘

竹町渡し場へ 10艘

*金一両、これは橋場と関宿の二ケ所の船改め番所の地代として、下されるものでもので、毎年川船役銀の内からこれを渡される。

*川船役所の普請修復については、その都度御勘定所へ届けて修復し、役銀の内からその入用の吟味を請けて渡される。

*小さな買物の品々は、年々御勘定所へ報告し吟味の上、役銀の内から渡される。

*川船役所を勤めていることから、川船の御年貢、役銀の高の十分の一を、毎年鶴武右衛門へ下される。

*川船の極印が損じた時には、これを改め、御勘定所に報告し、直接の吟味を請けた上で、(新しく)仕立て直すこと。

 

5. 現場で取締に当たった舟番所

陸上では箱根の関所をはじめ交通の要衝の地には多くの関所が設けられていたことはよく知られている。海の場合も、江戸と上方を結ぶ菱垣廻船や樽廻船等の物資輸送を取り締まる番所として江戸湾の入り口三浦半島に三崎・走水番所が置かれていた。

川においても銚子に流れる利根川と江戸湾に流下する江戸川とが交差する下総の国(現在の千葉県)関宿に舟改め番所が設けられていた。江戸の入り口での取締場所は、中川と小名木川の交差する地点に置かれていた中川番所である。『新編武蔵風土記稿』には、「中川番所 中川の西岸小名木川の入り口にあり。中川関所とも云う。江戸より下総国葛飾郡行徳領の方へ往来通船改めの番所なり。」と書かれている。この番所は、東西26間、南北17間余であったと云われている。『江戸名所図絵』には、図3に掲げた中川舟番所の風景が描かれており、当時の状況を知る良い資料となっている。

 

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図3 中川舟番所(『江戸名所図絵』より)

 

 

 

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