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(報告)

 

平成11年度SR研究の概要報告

研究部

 

平成11年度のSR研究の概要報告を「SR研究の基本方針」に基づき掲載する。終了課題は3件で、継続課題は7件である。

 

SR234 船舶のカーゴセキュアリングシステムの研究(終了)

 

国際海事機関(International Maritime Organization)は固縛の不備による事故防止を目的として1998年1月1日以降、船舶に貨物固縛マニュァル(Cargo Securing Manual)の搭載を義務づけている。この貨物固縛マニュアルの中には固縛装置の配置、数、固縛方法及び固縛の安全性を定量的に評価した結果を記載する必要がある。貨物の固縛評価手法はコンテナ船を対象として多くの船級協会により示されているものの、国際的に統一された固縛評価手法は未だ確立されていない。各船級協会の評価手法は、それぞれ異なり、同一の条件であっても計算結果にかなりの差異が生ずること、基礎となる考え方が示されていないため、近年の大型コンテナ船で採用されているラッシングブリッジを用いた新しい固縛方式等への適用に難点があること、等の問題点がある。また、自動車専用船を始めとするその他の船舶においては各船級協会にも適当な評価手法が存在せず、船会社の実績に基づいた積み付けが行われているのが実状である。本研究は、これらの問題点を解決し、可能な限り明確な根拠に基づき、さまざまな固縛システムに適用可能な貨物の固縛評価手法を提案して、船舶の安全運航を前提とした輸送効率の向上に貢献することを目的として行った。

コンテナ船と自動車専用船を対象として外力評価手法と固縛評価手法の調査研究を行い、実船試験や陸上試験等により新しい外力(加速度)評価手法並びに固縛評価手法を提案した。新しい外力評価手法では、船体運動の周波数応答関数から三軸方向加速度の長期予測値を求め、加速度楕円体を適用して加速度を評価する方法を、固縛評価手法では、固縛資材等の非線形性を考慮した三次元非線形モデルを開発し提案した。この新しく開発した固縛評価手法を用いて、コンテナ2段分の高さにラッシングブリッジを設けた新固縛方式(図1)の評価を実施し、8000 TEU積み大型コンテナ船の試設計を行った。図2は、8000 TEU積み大型コンテナ船と従来型コンテナ船との比較を行った図である。従来型と船型にそれほど差はないがコンテナ積み個数は大幅に増加していることが判る。

本研究により、貨物に作用する加速度の評価手法及び所与の加速度条件下において貨物や固縛装置に作用する各種の力の評価手法を示した。甲板上コンテナの新固縛評価手法は従来とは異なる固縛方式にも適用可能であることから、大型コンテナ船や新固縛方式の設計に資すると考える。また自動車専用船の固縛においては、固縛装置に作用する力と足回りに作用する力の定量的な評価が可能になった。

 

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図1. 新固縛方式

 

 

 

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