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それ以来ロイドリストにエリカ問題の記事が出ない日はほとんどありません。IMO、PSC、IACS、船級協会、海運会社、保険業社等から様々な意見が出されています。しかし日本の造船業としての関心はどうも薄いようです。当日本造船研究協会では「船舶の高度モニタリングの研究」をはじめ「新しいフリートサポートシステムの研究」等々、将来の船舶の安全に係わる極めて革新的な研究が行われております。現存船の40%以上を建造し続けてきた我が日本造船業は、こういった面でも大きく世界に貢献しなければいけないと思います。しかしこれらの研究が十分評価されないのは実に残念なことです。

 

(6) 海洋探査について

1999年の1月17日(日)に東京フォーラムで海洋問題の講演会が日本財団主催で開かれました。東大名誉教授奈須先生の基調講演は素晴らしいものでした。前年末まで米国に滞在され、ブロッカーの仮説(NHK TVでも紹介された海洋大循環流についての仮説)が証明された学会に立会われた報告をされ、たいへん感動的でありましたが、造船関係者の出席が少なかったのが残念でした。

2000年2月2日海洋科学技術センタ(JAMSTEC)の研究報告会が開かれました。400席のホールに沢山の船舶・海洋関係の人々が参集し5つの海洋関係の研究報告と東大松井孝典教授の「地球の起源と進化」と題する特別講演が行われました。海洋関係研究の最近の成果は誠にめざましく、まさに血湧き肉躍る思いがし、日本のこの分野の貢献が著しく大きくなっていることを知って嬉しく思いました。

海洋は造船にとってメガフロートを除くと、今すぐお金になりそうなプロジェクトとして見えてきません。造船関係者の関心が誠に少なかったわけです。漸く地球深部探査船プロジェクトが出てきて、人々の関心も増えてきました。海は地球表面の2/3以上を占め、地球環境を守る為には海洋が重要な役割を果たしています。そしてまだまだ探査することが沢山あります。世界で最も高い技術を持っている日本造船業は海の表面だけでなく、海洋全体に関心を持ち貢献しなければならないと思います。

 

色々思い付くままに申し上げました。最後にひとこと、日本人は徳川時代以来海を眺めて暮らす民族となりました。しかし、縄文、弥生そして万葉時代以降も幼稚な造船技術で海に乗り出し、果敢に異国との交流を行い高い文化・文明を持っていたことが最近の遺跡や古墳の発掘で分かってきました。万葉集にも海にちなんだ素晴らしい歌が沢山あります。私が日頃愛唱して止まない歌の中から2首を選んで締めくくります。

 

熱田津(にぎたつ)に 舟乗りせむと月待てば 潮(しほ)もかなひぬ 今は漕ぎ出でな

額田王

 

わたつみの 豊旗雲(とよはたぐも)に入日(いりひ)さし 今夜(こよひ)の月夜(つくよ) さやけかりこそ

天智天皇

 

 

 

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