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2. 試験や測定によって得られるものと結果の表現

科学や産業はもとより日常生活においても、測定(はかる)という行為の必要性は頻繁に出現する。衣・食・住に関わる直接の商取引、気象の予測や地球環境、人間の健康・安全に至るまで、測定された結果を定量化する際にその信頼性の表現が問題にされてくる。商取引においては、その結果が直接損得に影響し、健康の診断においては生命そのものに関与することもある。

計量計測においては、はかる(はかられる)ものの素性を明確にして、その量の定義をすることから始まるが、量の体系化はメートル条約の元で発展してきた国際単位系(SI)という一貫性のある単位系(その内容は、七つの基本量、それらの加減乗除からなる組立量、十の整数乗倍に関する接頭語が中心である)を基本として、量と単位の定義がなされている。これをもとにそれぞれの量の基準が「計量標準」という形で頂点に位置づけられている。すなわち、SIへいかに辿り着くかがトレーサビリティである。もっとも、化学計測の分野では、直接SIに結びつけることが困難な場合が多いので標準物質を媒体としてトレーサビリティを確保しようとしている。この場合にも基本的なトレーサビリティの思想や不確かさ評価の概念は、物理や、機械、電磁気の世界と同じである。

SIの定義を実現するために国際標準が作られ、それぞれの国が実現する国家標準(一次標準)が、国際比較という形で確認されたものが校正機関や認定試験所が実現する二次標準を経由して現場の実用標準、さらには種々の測定機器や測定方法の信頼性が確保されることになる。このような上流側からの標準の流れを標準供給というが、逆向き、すなわち、現場の計測機器から二次標準を経て国家標準までさかのぼる過程を計測のトレーサビリティと呼んで、その体系作りと活用が世界的な重要課題として取り上げられている。

 

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図1 計量標準の役割とその活用(国家計量標準研究所と計量計測のユーザーの関係)

 

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図2 国家計量標準を確立するための三つの道筋(プロセス)

 

計量計測にかかわる分野は、前述のように極めて幅が広く、一般には図1に示すような範囲に及んでいる。この意味でも世界的に共通な概念や手法を導入することの重要性が認識できる。また、国の標準としては、自国でそれを実現できれば望ましいが、必ずしも全部を自前で準備できなければ他の国から一次標準を供給してもらうという図2のプロセス3の方式も可能である。この意味でも計量計測分野の国際協力が重要視される。

さて、計測にはそのおかれた状況を十分に認識してはかることが大切であり、十分な計画性と準備が必要となる。それには、文章表現と同様に4(5)W1H(When:測定時期、Where:測定機関、Who:測定者、What:測定機器・方法、How:測定条件、Why)といった概念の整理が大切であり、役に立つ。なお、以下に関連する用語や概念の意味を下記に示しておく。

 

 

 

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