日本財団 図書館


1 序

 

現在タイ国において同内貨物輸送(トンベース)の約90%が道路輸送であり、船舶による沿岸輸送は約5%に過ぎない。バンコク首都と東部、西部、南部の臨海部との貨物輸送も、主に自動車輸送に依存しており、同国東部にある主要国際貿易港の「Laem Chanbang Port」を経由する輸出・輸入貨物の国内輸送もその大部分が自動車輸送で行われている。これらの自動車輸送が、バンコク等の都市部の道路渋滞、交通事故を引き起こしている。

また、同国の貨物陸上輸送は、近年特に深刻の度合いを増している環境問題(大気汚染、騒音、振動等)により住民の生活及び寺院等の歴史的建造物等に悪影響を与えているほか、最近の石油価格の高騰により、より省エネルギー型の輸送が望まれている。これらの解決策として、自動車輸送から環境にやさしく、省エネルギー型輸送である船舶、鉄道輸送へのモーダルシフトが考えられる。

同国政府は、従来、全国の国道、県道の建設等による陸上交通のネットワークを最優先課題として推進して来たところであるが、上記問題の解決策としてモーダルシフトの重要性を認識している。具体的には、2000年6月海事産業振興基本計画が閣議決定され、同国運輸通信省が2001年5月にモーダルシフト振興の政策提言をすることとなった。

同国政府は、現在この政策提言に向けて調査しているが、モーダルシフトの効果、規模等についてはマクロ的、定性的評価にとどまり、結果として生じる具体的なトラックから船舶にシフトする貨物輸送量、輸送航路、貨物輸送コスト、必要となる船の大きさ、船種、荷役形態等の定量的評価は行われていない。

一方、同国のモーダルシフトの主体はRo-Ro船が考えられるが、同国造船所には同種船舶の建造技術は無く、また、運航会社も政府系特殊会社が考えられるため、我が国の経済協力案件となる可能性がある。

このため、同国政府が2001年5月以降行おうとしているモーダルシフト施策の内容、モーダルシフトを推進した際に生じる新たな造船需要(陸上輸送から船舶輸送へシフトする貨物輸送量、必要となる船の大きさ、船種、荷役形態等)の情報等を収集、解析、整理することにより、造船需要の低迷に悩む我が国造船事業者が同国のモーダルシフトの推進による新たな経済協力案件への対応に資する資料を得ることを目的とした。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION