日本財団 図書館


航海速力が40ノットを超える長さ145メートルのMDV3000は旅客1800名、460台の乗用車を搭載可能な設計となっている。推進プラントは、4基のディーゼル機関を原動力とする2基の操舵用ウォータージェット及び2基の航空用からの転用型ガス・タービンを原動力とする2基のブースター用ウォータージェットからなり、その総出力は95,000馬力に達する。水中翼、双胴型、単胴型についての設計と性能に関する最近の研究結果を踏まえて、アルミ合金の上部構造を搭載した高張力鋼製の深いV型の排水船体の採用により、凌波性、高速持続性、耐久性という、必ずしも両立しない要件の最適な調和を図っている。

単胴船であれば可動ランプにより岸壁からの乗降が可能で、これは例えばStenaのHSSなどの双胴船に比べて大きな利点となる。双胴では乗降に特別な設備を必要とする。

Fincantieriは現在、100メートルのMDV1200(Super Sea Cat)が商業的に許容しうる費用対効果比を有する最小の高速単胴船型と考えているようであるが、これに対してKvaernerは双胴船を有利と見ているようである。

高速双胴船市場は一般に、船体長により3つに区分される。30メートル以下の小型部門は非常に多くの事業者が参入しているのに対して、90〜120メートルの大型部門ではIncatとAustalが支配的である。30〜60メートルの中型部門はKvaernerの専門領域で、この船型の最大積載能力は旅客800名、乗用車50/60台である。同社は以下のふたつの基本船型を提供している。

Flying Cat:50メートル以下の8種類の構成、乗用車積載能力20台以下。

Jumbo Cat:60メートル、旅客定員450名と乗用車60台。(72メートルの船型も検討中。)

推進方式はFlying Catの小型の2型式を除いていずれもウォータージェットで、例外の2型式は可変ピッチ・プロペラで最高速力は30〜45ノットである。いずれの型式も以前の水面滑走式でなく半没水式双胴船である。水面滑走式は費用対効果比が低いために建造が中止された。特許を有するMDSシステム(運動緩衝システム)により縦揺れ、横揺れ、上下・前後動を最小限に抑えている。その目的は信頼性確保である。

Nordic Jet Linesが1998年にFlying Catをヘルシンキ/タリン航路に導入した際、新鋭船の高い信頼性と波高3メートルまでの荒海でも航行できる能力を根拠に、同社は最初の3ケ月で同航路の45%を獲得すると豪語したが、そもそもバルチック海では水深が比較的浅いため、単胴船よりも双胴船の方が当然有利である。

 

7.3 港湾

新しい航路の実績が伸びているにもかかわらず、RoRoサービスが利用できる港湾の数は足踏み状態であると思われる。ただし、新たな港間の組合せは出てきている。また、RoPaxが従来の旅客フェリーあるいは貨物フェリーに取って代わってきており、RoPaxサービスが利用可能な港の数は増加している。

船主側の港湾側に対する主たる要求は、適切なリンクスパン(岸壁と船との連絡橋装置)の提供である。船舶が大型化すると回転を速めるために、広いランプを備えた複数のリンクスパンが必要となる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION