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1988年以降欧州向けに発注された103隻のRoPaxは船主30社が31の造船所に建造させたものである。表5.4に、2社以上から受注した12の造船所の客先分布を示す。これらの造船所で1988年以降に欧州7カ国と日本で建造されたRoPaxの70%強を占めている。また船主総数42社のうち18社から受注している。

この欧州7カ国に所在する5船主が発注した隻数は16であるが、これらでさえ必ずしも自国に発注されているわけではない。事実、自社のRoPaxをすべて国内造船所に発注したのはGNVのみで、全てがApuaniaで建造されている。欧州の船主は通常欧州域内に新造船を発注するが、しかし他の国である。また発注先の造船所も一定していない。2隻上発注した船主の中で、1造船所のみに発注をしているのはGNVとCenagoのみである。

ドィツの2造船所は17隻を、イタリアの2造船所は12隻を受注している。フィンランド(2造船所)とスペイン(2造船所)はそれぞれ10隻を建造、ノルウェーの1造船所は9隻、オランダの1造船所は6隻を建造した。クロアチアと日本はそれぞれ3隻を建造している。近年の受注ではドイツの造船所がきわめて優勢なようで、以下の表の作成後にも受注している。

表5.4に掲げられた船主は表中の造船所のみに発注しているわけではない。またRoPaxを1隻か2隻建造しただけの造船所の唯一の顧客という場合もある。最も浮気な船主はStenaで6隻の発注先が5造船所にも上っている。Attica、TT、P&Oはいずれも4造船所、Minoan、Cotunav、Sea Containers、Trasmediterraneaはいずれも3造船所を起用している。

極東の造船所(三菱、三星、大宇、その他にインドネシアと中国の造船所)は7船主向けに11隻を建造した。その内訳はP&O、Minoan、Finncarriers、Moby、Finnlink、Trasmediterranea、Gotland Rederiの各船主である。これらの契約の詳細は付属資料に示すが、極東の造船所が現在競争力を有する分野を示すものとなっている。

欧州の船主は個々の造船所と密接な関係を維持することはなく、欧州域外の造船所への発注の検討に意欲的ですらある。しかし、個々の造船所について、特定の要素を意識している可能性は高い。例えばクルーズ・フェリーを発注しようとした船主は、中国の造船所について、艤装の専門能力が皆無で、仕様を満足するためには多種多様な下請業者を新たに育成しなければならないため、船価面でさえ競争力がないことを知ったとしている。

造船所がRoPaxに特化しているように見受けられたり、あるいは複数の造船所がRoPaxの建造に起用される理由のひとつは、選択の幅が限られていることにある。最も評判のいい造船所は船台が埋まっていることが多い。

 

 

 

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