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ステベドアは1998年の公聴会でCOGSA改正案が通過すると、彼等に無限責任が課されることに反対している。ヨーロッパの政府関係者、海事法律家及びロンドンのP&Iクラブの人々はCOGSAの現時点での改正そのものに反対している。

 

ヨーロッパ筋の反対は、米国だけが一方的にCOGSAを改正しないで、世界的に統一された貨物責任制度が完成するまで今しばらく待つべきであるという理由である。世界40ヶ国の海事法律家が集まる審議機関である国連国際海事委員会は世界的貨物責任制度について討論を開始したばかりであるが、結果が出るのに数年かかると予想されている。

今回の米国の改正COGSA案は世界中の産業国が使用しているHague-Visbey規則よりさらに高い限度額を採用している。

 

米国内においても貨物の損失や損傷に関し限度額の決定は裁判所毎にばらつきがある。

米国裁判所は荷ごとの責任限度額を採用する傾向にある。キャリアが契約から外れた不当な、或いは荷主により高い責任限度額で契約することを拒否した場合の仲裁にはいつも荷当たりの責任限度額を用いている。

 

以上本章において国際航路海運業の振興策をみてきたが、海事関連法で常に米国海運業界を賑わせてきたのは国内海運業に対するジョーンズ・アクトである。ジョーンズ・アクトもサブパートFと同様に、このところ毎年の様に改正案が議会に提出され、その都度却下されている。

外洋を航行する国内航路すなわち非隣接航路及び沿岸航路を外国籍船に開放して一層の競争原理を導入するべきだという議論に立脚した全面改正案は主として荷主が後押しをして進めてきたが、クリントン政権のジョーンズ・アクト現状維持の姿勢は堅く、改革派の提案は次第にスケールダウンしたものとなっていた。今、ジョーンズ・アクト航路で最も問題となっているのはジョーンズ・アクト船が少ないということでありスケールダウン案の最初はバルク貨物(Bulk Commodities)の輸送に限って外国籍船での国内輸送を許可しようというものであった。

 

次に現れたのはドライバルク及び液体バルク船について米国内建造要件を取り外そうとするブラウンバック上院議員の提案である。

 

 

 

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