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不安の理由は大量殺戮兵器生産技術の世界中への蔓延、それに基づく米大陸への直接ミサイル攻撃の危険性、国際テロリスト・麻薬組織からの防衛、組織的密入国等からの国境防衛等で、具体的にはこのところ増大する中国、北朝鮮、イラン等からの軍事的脅威、国際テロリストによる米大使館爆破等がその理由としてあげられる。

2000年予算教書(付録1)において、クリントンは今後上記危機に対処するため軍事予算を定常的に増額し、軍事技術の近代化を進めることを求めている。1999年度より17百万ドル増額された2000年度軍事費276百万ドルは、1999年10月14日上院を通過した。本予算により、米海軍が調達財源に苦しんでいた海軍補助艦ADC(X)が建艦予算に組み込まれた。

 

2000年予算教書の中では、科学技術政策として基礎科学技術の振興を呼びかけている。

予算の重点配分先は、National Science Foundation、National Institute of Health、NASA(Natinal Aeronautics and Space Administration)である。また、重点研究事項として情報技術、生命を救う薬品、竜巻の早期予報、燃費の良いより安全な自動車、地球環境を守るためのエネルギー効率技術、代替燃料技術等をとりあげている。

 

3-2 軍民転換の基本施策

 

ハミルトン主義への転換を標榜したクリントン政権は、積極的に軍事技術の民生産業への転化、商業技術開発の支援に関与することを表明し、議会はこの動きを具体化するために1992年末早くもPL102-485及び102-190を可決、スタートさせ、国際市場におけるメイド・イン・アメリカの地位を回復させるための資金及びメカニズム作りを可能にした。

 

クリントンは就任の時点で今後は殆どの技術が試される場は戦場ではなく民間市場であること、米国が優れた基礎技術を持っていながら商業的成功に結び付ける技術において日本やドイツに後れをとっていることを率直に認め、製造分野まで含めた技術開発促進計画のフレーム作りの必要を説き、軍事技術の民生転化のメカニズムとして下記の4つのプログラムを創設した。

* 技術再投資プロジェクト(Technology Reinvestment Project:TRP)

* 先端技術プログラム(Advanced Technology Program:ATP)

* MARITECHプログラム

* 船舶輸出及び造船所近代化債務保証

 

上記のプログラムのうち、最初の3つは産・官・学が三位一体となって参画し資金的には政府と民間が折半するコスト・シェアリング開発プロジェクトで、軍研究所が持つ膨大な設備と優秀な頭脳の民間技術への転化を狙ったものである。

3つのプログラムのうち、クリントン政権が最も力を入れたのはTRPである。また上記4プログラムの最後の2つは、当時冷戦構造終結の影響を最も受けると予想されていた造船業及び舶用工業にクリントン政権が特別の配慮を加えたプログラムで、MARITECHは対象を造船業及び舶用工業に絞ったコスト・シェアリング開発プロジェクト、船舶輸出及び造船所近代化債務保証は従来のタイトルXIを輸出船及び造船所近代化の分野にまで拡大したものである。

 

 

 

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