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1.15 海運業への資本供給の傾向

商業銀行債務は、回転率が良く自由になった資金を再投資でき、また、コストも低い(投資に比べて)ので、今後も海運業の最も重要な資本源であり続けるであろう。供給の見地からすると、銀行融資の供与は、1999/2000年には縮小すると見込まれるが、その後、銀行の予算や海運市場が原則として融資拡大を支持する方向へ向かうので、再び増えるであろう。融資構造の面から見ると、プロジェクトファイナンスから遠ざかり、企業貸付けに向かう傾向にある。海運会社の統合の動きがこのまま続く場合には、こうした貸付けのアプローチが、より一般的になろう。特に大手の船舶融資銀行ではこうした傾向が顕著となろう。このような状況となると、小規模の借り手は、大手の銀行から受け入れてもらえなくなるので、この様な資本要求に応えるための小規模銀行家の新しい銀行市場が現われてくるであろう。

海運業統合による大企業化は、リースファイナンスの貸し手が要求する信用条件の充足を容易化し、その結果、税効率のよいリースが増大に結びつくものであるが、これは、関連の税法が船舶リーススキームを優遇するものであるかどうかにもよる。

現在のところ海運業への発行が停止されているハイイールド債も、良質の借り手に対しては、再び利用可能なものとなろう。ハイイールド債商品は融資に代わるものとして、海運業でも効果的に使えるものであるが、投資と混同すべきではない。

海運会社による公開株式市場からの資金調達に関しては、投入資本に対する配当の改善という根本的な問題を解決するまでは、課題が残るであろう。業界の統合は問題解決にプラスにはなろうが、数年でこの問題が解決するとは考えにくい。

自己資本の個人所有海運会社への投入は、重要な資本源であり続けるであろうし、公開投資市場ではあまり好まれない市況循環防止的投資に適している。個人投資を促進するには海運市況の改善が必要であるが、今後の新造船の竣工による供給過剰が市況改善を阻害し、需給均衡に時間を要するため、市況の改善はここ数年は見込めないであろう。なお、ニッチ市場は、絶好の投資機会を提供すると考えられるし、造船所の過剰建造能力が明らかに過剰船腹供給や、投入資本に対して乏しい利回りをもたらすようになるまでは、主流の海運分野でも高い短期収益が可能であるかもしれない。

 

 

 

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