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1.7 EMEにおける商業銀行融資-海運業の主な債務源

EMEの海運業の債務総額810億ドルのうち、610億ドルは商業銀行からの融資である。融資は通常、海運業のポートフォリオを手広く展開している銀行の専門部門を通じて供給される。銀行による融資供与の規準の概略は、以下のとおりである。

* 適切な企業構造及び株主

* 受容可能な事業活動

* 信頼のおける経験豊かな経営陣

* 受容可能な担保

* 堅実な財政状況

これらの規準については、第5章に詳述する。堅実な履歴や適当なキャッシュフロー・担保を持った大手の海運会社の場合、中期優先弁済借入金を調達することは、比較的容易である。貸付額は、通常、中古船で50〜60%、新造船で60〜70%である。船舶資産への100%融資を受けるためには、常に、追加の担保、あるいは、相当の資本力のある企業の保証が必要である。借入れコストは、他の企業分野に比べると高いが、プロジェクト・ファイナンスの形式の場合は比較的低い。借り手は、優先弁済市場ではリスクを補うための価格はないことを認識すべきである。リスクがある程度のレベルを超えてしまうと、この形式の融資は、単に入手できなくなってしまう。EMEにおける船舶ファイナンスでは45の主要商業銀行(船舶融資のポートフォリオが5億ドルを超えるもの)が活躍している。

海運業への貸付けを大規模に行っている政府系金融機関は4つあり、EME内の海運の債務総額810億ドルのうち、140億ドルを供給しているものと見られる。第5章に、主要銀行と政府系金融機関を分類してリストアップする。上位8つの銀行及び政府系金融機関で、EME内の海運業向けの債務総額の50%近くを占めている。

 

1.8 EMEにおけるリースファイナンス

リースファイナンスは、EME内の海運債務総額810億ドルのうち、30億ドルを占めるとみられる。リースファイナンスの仕組みの下では、船舶所有者の全リスクは、実際には、船舶の借手に移転される。船舶の貸し手は、通常、節税対策を提供できることから、船舶の借り手への融資コストを減少させることができる。貸し手は、常に、海運業のリスクも税金リスクも負うことはなく、借り手が財政的に余程強くない限り(通常投資等級の格付けによって明示される)、信用の保証は、優先弁済借入金を貸付ける商業銀行によって提供される。リース構造は100%ファイナンスであるが、クレジット構造は、最低限でも、優先弁済借入金融資の慣行に倣うものとなろう。

 

1.9 EMEにおけるハイイールド債ファイナンス

EMEの海運会社に対する債券ファイナンスの額は、EME内の海運業の債務総額810億ドルのうちの20億ドルと見られる。海運会社で、投資適格の会社(格付け機関によって、BBB以上とされたもの)はごくわずかであるため、ほとんどの海運会社の債券発行は、米国のハイイールド債市場で行われる。

 

 

 

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