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一方、推進器に対する改良技術については、中型船ではPBCF、フェリーなど一部の高速短距離船ではCPP、大型船ではコントラプロペラ等の技術が実用化されつつあり、短期的技術として有望であると考えられた。特に、PBCFは船型の適用範囲が広く、レトロフィットも比較的容易であり、新造船か既存船かに関わらず輸送エネルギー効率の改善が得られる点で有望であると考えられた。価格的には船体価格の10%以内で設置できるものであり、コスト回収も比較的容易であると考えられる。適用の試算結果を表7.2-2に示した。

 

表7.2-2 推進器に対する改良技術の適用試算結果

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長さ240m、Cb値0.80のタンカーへの適用計算例。

Marine Report No.23(1996年6月)より作成

 

これら短期的技術による平均的なCO2削減効果は概ね5%程度であり、これを全船舶に適用したと仮定すると、2020年における輸送エネルギー効率は、ゼロオプションに比べて3%強の改善が、同じくCO2排出量は7〜9%程度削減されるものと考えられた。ただし、削減効果を上回る貨物量の伸びの結果、1997年と比較した2020年のCO2排出量は、upper caseの場合には約65%、lower caseの場合でも約30%も増加すると予測された(表7.2-1 対策2参照)。

 

3] CO2以外の温室効果ガスの排出削減

排出量はCO2換算で12×106tと少ないものの(外航船舶から排出される温室効果ガスとして全体の4%程度と試算される)、CH4、HFCsなど、CO2以外の温室効果ガスに対する対策も短期的対策として視野に入れる必要がある。7.1.3で述べたように、その全量を船舶運航の排出量とするのが適切なのか、という仕分けの問題等もあるが、排出起源のアロケート問題をひとまず横に置いた場合、これらの物質については具体的な対応策が採りやすい側面があり、地球全体での温室効果ガス削減という観点からは、早急に何らかの取組みを開始すべきと考えられる。

例えば、原油をタンカーに積み込む際に排出されるCH4はこれを陸上側施設で燃焼処理することにより大きく削減できる。LNG船と同様のクローズドカーゴシステムは、既に一部の国では採用されており、国内の原油備蓄基地など陸側施設への普及が待たれるところである。

さらに、冷凍船や冷蔵・冷凍コンテナに用いられるフロン・代替フロン等の冷媒の漏洩問題がある。フロン類(HCFCs)はオゾン層破壊の原因物質となることが明らかになり、1987年のモントリオール議定書によりその製造禁止が決定した。

 

 

 

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