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6.2 まとめと今後の課題

 

本年度の成果により、「吸着剤−脱硝触媒システム」の有効性が明らかとなり、最適なシステムを設計できれば十分に実用可能なシステムであることが実証できた。本年度の成果をもとに「船舶からの排気ガスの浄化方法および浄化装置」として特許出願を行った。来年度に向けてはハニカムの作製方法に加えて劣化した場合の水洗処理、交換等、システムの運用方法の詳細化を図る必要がある。実排ガス試験に際しての今後の検討課題としては以下の点が挙げられる。

 

(1) 吸着剤ハニカム性能の向上

本年度の結果から吸着剤を表面に固定するだけでは不十分であり、如何に担持重量を増加させるかが重要であることが明らかとなった。今回用いた方法はCoatingであり、貴金属の様な高価な材料の場合、ディッピングにより薄くコーティングを行うが、成分はポーラスになり、全体を覆う訳ではない。これに対し吸収の様な遅い反応に適用可能なハニカムとしてSolid式が知られている。これは卑金属の様な安価な材料や吸着剤のように量が必要な場合、ハニカムウォールに成分を練り込むことで効率を上げることが可能である。これらの方法により今後吸着性能向上を図る必要がある。

 

(2) システム運用上の問題点の検討

最適なシステムを設計できれば十分に実用可能なシステムであることが実証できたが、硫黄分による被毒劣化の影響への対応(再生、交換など)や、負荷変動への対応など、システムを有効に作用させるための運用上問題点を検討する必要がある。吸着剤からの脱離分による濃度変化もできるだけ緩やかになるように配置等を設計しなければならない。

したがって、これらのことを考慮して来年度の実証実験に際しては以下の点を考慮する必要がある。

1] 使用するA重油の性状の均一化

使用するA重油の種類によって硫黄分の濃度がかなり異なるため、同一種類の燃料を一連の実験を行うために必要十分な量を確保する必要がある。

2] 吸着剤の昇温コントロール

試験に際して、エンジンの状態をどう設定するか、排ガス温度のコントロール方法(エンジン出口からの距離、保温、反応器サイズ等)の検討が必要である。

3] 排ガスの分析方法の検討

システムの有効性を検証するためには、排ガスの正確な分析が必要である。負荷変動による流量変化等を考慮して、排ガスの導入方法も検討する必要がある。

以上

 

 

 

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