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第6章 まとめ

 

6.1 成果概要

 

本調査研究では、出港時等の触媒入口温度が低い条件では従来型の脱硝触媒が十分に作動しないという問題を解決する方法として、「吸着剤−選択還元触媒」の複合化による新しい脱硝システムの調査研究を実施した。

本年度は昨年度までの調査検討結果をもとに、舶用ディーゼル機関の実排ガスを用いた実証研究を行うための基礎試験として、以下の項目について検討を行い、実証試験のための基礎データとすることを目的とした。主な成果は以下の通りである。

 

(1) 装置設計/製作

共存ガスの影響を検討するために、SO2分析計(ヤナコ製)を購入し、SO2の定量分析を行えるよう、反応装置の改修を行った。また、ハニカム成型品による吸着性能試験を行うための反応器を作製した。マスフローコントローラーおよび水分導入機構等、その他の反応ラインも大流量に対応できるように変更した。これにより、共存SO2による被毒影響試験が可能となった。

 

(2) 吸着システムの基礎特性研究

1] 共存ガスの影響評価

上記評価試験装置を用いて共存ガス、特にSO2による吸着材の吸着性能への影響評価を行った。共存SO2の影響は、初期における被毒効果は小さく(9%程度)、100%のSO2が吸着される。またH2OとSO2両者が共存すると吸着能力は77%程度に低下する。また、NOとSO2の競争吸着試験の結果から、SO2の吸着力はNOと比較してきわめて強く800℃以上まで脱離しないことが明らかとなった。

また、排出ガス中の分析結果から、本実験条件下では酸化反応生成物(SO3)は生成していない。したがって、SOxを同時に吸着除去することで硫酸アンモニウム塩の生成によるSCR触媒被毒や配管の腐食が回避できるため、より低温からSCR法が適用可能となる。ただし、繰り返し使用するとSO2の吸着により性能は徐々に劣化するため、実用システムの運用に際しては、今後水洗等の再生方法、あるいは簡便な交換方法の検討が必要であることが明らかとなった。

 

2] 「吸着剤−脱硝触媒」2層反応システムの有効性の検証

V2O5(1%)/TiO2触媒を調製し、「吸着剤−脱硝触媒」2層反応システムの有効性を検証した結果、吸着剤前段からのアンモニア導入ではNH3酸化によりNOx排出量が増大してしまうが、吸着剤後段からのアンモニア導入によりNOx排出量大幅に低減できた。

 

 

 

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