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これは、図5・7に示すように単噴口ノズルと多噴口ノズルでは噴射方向が異なるので副室内の燃料分布が異なるのは明らかであり、副室内の燃焼が変化しているためと考えられる。ここで、ノズル仕様φ0.4×4−60°の場合に着目すると、連絡口面積比が1.5%、0.9%の場合ともに燃料噴射時期を上死点まで、遅延させても図示熱効率はほとんど低下せず、燃料噴射時期の影響が少ない。特に、噴射時期を遅延させた場合では、噴射ノズルφ0.55×1とほぼ同等となっており、この噴射ノズルにおける燃焼を詳細に解明することにより、高熱効率、低NOxの同時低減を達成する燃焼系の構築に大きな手がかりを得られるものと考えられる。

単噴口ノズルでは、燃料噴射時期の進角に対してNOxは単調に増加するが、多噴口ノズルにすると、燃料噴射時期10degBTDCより進角するとNOxの増加傾向は頭打ちになるか、または逆に減少する傾向がある。全ての条件で、連絡口面積比が0.9%のほうがNOxの排出が多い。これは、空気あるいは燃焼ガスが、主室から副室、副室から主室へ移動する際の速度が連絡口面積比0.9%の方が高いため、燃料と空気、燃焼ガスと空気の混合が促進されるためと考えられる。

スモークの排出は、噴射時期を遅らせた場合のほうが減少し、また、連絡口面積比が0.9%のほうがスモークは低い。これは、NOxの場合と同様、燃焼ガスが連絡口を通過する際の速度が連絡口面積比0.9%の方が高いため、混合が促進され、すす生成の抑制、再燃焼の促進がなされたためと考えられる。

○ 燃焼経過

燃料噴射時期10degBTDCの場合における熱発生率を図5・12に示す。多噴口ノズルでは熱発生率のパターンの影響は少なく、燃焼経過に及ぼす連絡口面積比の影響は小さい。このため、連絡口の絞り損失がそのまま図示熱効率に反映し、連絡口面積比0.9%の方が図示熱効率が低下したものと考えられる。単噴口ノズルでは、連絡口面積比が0.9%のほうが燃焼期間中の中〜後期にかけて熱発生率が高くなり、後期にかけては後燃えが大きく減少している。これは連絡口面積比0.9%では、副室から主室への燃焼ガスの流速が速く、このため、主室における燃焼ガスと空気との混合が改善され、燃焼期間が短縮し、その結果、図示熱効率が向上したためと考えられる。

一方、燃焼経過(熱発生率パターン)に及ぼす燃料噴射ノズル仕様の影響は大きい。噴射ノズルを変えた場合の熱発生率を図5・13に示す。燃料噴射ノズルφ0.4×4−60°の場合では燃焼初期〜中期にかけて熱発生率が高く、燃焼後期において、後燃えが減少し、燃焼期間が最も短い。このために、図示熱効率も最も高くなっている。一方、燃料噴射ノズルφ0.16×4−40°の場合では熱発生率は低く推移しており、これはこのノズルでは噴口径が小さいため燃料噴射期間が長くなり、特に、廃食用油では粘度が高いため、特にその影響が大きく現れたものと考えられる。

図5・14に示すように、燃料噴射ノズルφ0.4×4−60°では、噴射時期を遅延させても図示熱効率が低下しない。噴射時期を変えた場合の熱発生率を図5・14に示す。

 

 

 

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