5・4 廃用油を燃料とした遮熱エンジンの性能
廃食用油を燃料とする遮熱エンジンを開発するため、まず、単気筒エンジンによる性能試験を行い、廃食用油の基本的な燃焼特性とエンジン特性を明らかにする。そして、後述する急速圧縮膨張装置による燃焼観察を平行して実施し、廃食用油エンジンに適した燃焼系を開発する。
5・4・1 単気筒エンジンの構造および燃焼室
試作した廃食用油遮熱エンジンの構造および燃焼室を図5・6に示す。遮熱は主に副室、主室、ピストンクラウン等の燃焼室周りおよび吸気・排気ポートに行っている。燃焼室周りの材料として高温強度、低熱伝導率の低い窒化珪素を用い、さらにその背面に空気層を設けて遮熱の効果を大きくした“魔法瓶構造”である。このような構造によって、燃焼室内面は高温となるにもかかわらず、エンジン外周は冷却エンジンとほぼ同等に維持でき冷却系の除去を可能とした。シリンダライナーは、クランク角で上死点前後約50degの時におけるピストン頂面の位置で遮熱ガスケットを介して2分割とし、上方はシリンダヘッドと一体化し、ヘッドライナーと称している。したがって、高温となっているヘッドライナーから下方のライナー(ボディーライナー)への熱は遮断され、ライナー温度は冷却エンジンとほぼ同等で、ピストンリングとライナーの潤滑の問題はない。