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しかし、輝炎の消滅は1073Kの場合の方が速くなっている。これは773Kの場合に見られる着火後の噴霧の膨張がないため、噴射による噴霧の側方からの空気導入が多く、空気温度も高いので燃焼が促進されているものと考えられる。このために、773Kの場合に見られた噴霧中のすすが多く生成されている領域の褐色の部分はやや薄くなっている。

(2) 軽油および廃食用油との比較

今回撮影したメチルエステルと平成11年度に撮影した軽油および廃食用油の燃焼を図5・3、図5・4にそれぞれ示す。ともに燃料噴射後1.7ms後で、燃料噴射終了直後である。なお、この場合の着火遅れは軽油、廃食用油ともに空気温度773Kで0.5ms、1073Kで1.3msでメチルエステルの場合とほとんど同じである。

軽油の燃焼の場合、773Kでは噴霧周囲に不輝炎が観察されること、噴霧中心部にすすの褐色の濃い領域が観察されること、1073Kの場合では噴霧形状が二等辺三角形であること、すすの褐色の濃い部分が773Kの場合に比べて薄くなっていることなど、メチルエステルの燃焼は軽油の燃焼経過と同様の特徴を持っている。メチルエステルの燃料性状が、引火点、初留点を除いて、むしろ軽油に近いためと考えられる。以上のようにメチルエステルの燃焼は軽油の場合とほぼ同様となっており、このためエンジンにおいてもメチルエステルでの性能は軽油と遜色ないものと考えられる。

一方、廃食用油の燃焼では、773Kにおいて不輝炎が観察されないことが大きな特徴である。しかし、空気温度を1073Kに上昇させると燃焼の特徴は軽油、メチルエステル、廃食用油ともに燃焼上の大きな差異は認められなくなる。

773Kにおけるメチルエステルと軽油の燃焼の相似性と実機での性能、および1073Kにおける3種の燃料の燃焼経過から、高温燃焼となる遮熱エンジンに廃食用油を軽油と同様の燃焼方式で適用可能であると予測できる。

 

5・1・4 まとめ

(1) 廃食用油から製造されるメチルエステルは空気温度773K、1073Kの場合ともに、軽油とほぼ同様の燃焼経過となっており、燃焼の初期に不輝炎が観察される。

(2) 空気温度1073Kでは、軽油、メチルエステル、廃食用油は同様の燃焼経過である。

(3) 軽油で得られた遮熱エンジンの燃焼方式で、廃食用油を遮熱エンジンで適用できる。

 

5・2 廃食用油を燃料としたエンジンの燃焼コンセプト

廃食用油エンジンにおいて、高い熱効率および低NOx、低スモークを実現する燃焼のコンセプトを以下のように設定し、その概要を図5・5に示す。

1] 窒素酸化物の排出が少ない副室式とする。

 

 

 

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