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ケミカル船では既に建造実績を上げつつあり、さらに客船需要の取りこみを目指している。

次に、個別企業の今後の経営戦略に関しては、次項以下のとおりである。

 

(2) 現代重工業

1] 現代グループの構造調整

現代重工業が所属する現代グループは、5つの小グループに分離することを骨子とする構造調整を公表するなど、財閥構造変革へ向けた変化を見せている。構造調整計画は、概略次のとおりである。

第1段階として、グループとしては自動車、電子、建設、重工業、金融サービスの5つの分野に事業領域を絞り、それ以外の事業は吸収、ないし外部売却を行う。既に、1999年に金剛開発を始めとして一部非主力企業の切り離しを実施しており、現代グループの企業数は、構造調整前の79社から26社へ減少し、グループ負債比率も341%から200%を切る水準にまで低下させている。次いで、第2段階として、5つの分野を2003年にかけて順次、小グループに分離させていく。各小グループは「現代」という企業名を維持し、「現代精神」という資産を継承し、各小グループの海外営業拠点の連携や情報の共有化というように相互に協力していく体制を築く。さらに、各社のコア・コンピタンス(競争上の核心的な強み)を育成し、財務構造の改善を図る予定である。その結果、主力企業は世界シェア3〜5位以内を確保し、全体で5兆ウォンの当期純利益を上げることを目指している。

現代グループでは、2000年4月から現代投資信託の債務超過、流動性危機説が流れたことをきっかけに、グループ全体の危機説が流れることとなった。その伏線として、現代グループの継承をめぐる一族間の対立がしばしば発生していた。結局、鄭周永名誉会長、鄭夢憲会長(鄭周永氏五男)が退陣を表明した。しかしながら、実質的な支配権は、現代建設、現代電子産業等は依然として鄭夢憲にあり、また、現代自動車は鄭夢九氏(鄭周永氏次男)、現代重工業は鄭夢準氏(鄭周永氏六男)に残された状態であり、現代グループの後継を巡る争いが続いている。また、現在、グループ発祥企業である現代建設が経営破綻の危機に直面している点も、現代グループに大きな不安を与えている。同社は2000年10月末に一時不渡りを出すなど、非常に厳しい状況に置かれている。同社の処理は、2001年に入って決定されることになるが、その際には、清算や法定管理(日本の会社更生法に該当)となる可能性も依然として残されている。現代建設問題は、同社への経営支援実施を通じて現代重工業に負担をもたらすことが予想される。

このような中、現代グループの5つの小グループヘの移行は、後継問題、現代建設の経営悪化、政府の小グループ化への移行圧力により、加速化されると見られている。

 

 

 

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