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それも大規模な改造をしなくてもちょっとした工夫でずいぶん住みよくなるものです。福祉の改造については、補助制度もあります。何といっても改造相談を気安く、実質的に行えるようにすることが第一といえます。ボランティアを絡めた住宅改造相談システムの整備を考えるべきです。

 

(2) 空家の保存と活用

町並みの保存については、空家の問題があります。家に住むことをやめればすぐに傷んできます。とにかく、まず住み続けることが大切です。日野地区においては、商店街の活性化のためにも活用が必要ですが、空家の所有者が遠くにいたりして、なかなかうまく活用できないことも事実です。

 

受け入れシステムの整備

魅力ある住宅・商業環境となっていけば、外部から日野地区に来る人も増加してくるでしょう。この時、その受入れをシステムとして整備することが重要です。所有者が安心して貸し出せるように、町あるいは第3セクター的な組織が空家の活用の仲介ができるようなシステムの創設がのぞまれます。また歴史的価値の高い建物については是非公開民家として保存していきたいものです。町が買収していくのはなかなか財政的に苦しいと思いますが、できれば寄贈あるいは借家という方法も考えられます。

 

空家所有者にまちづくりの発信

いづれにしても空家の所有者に今進んでいる日野地区の歴史を活かしたまちづくりをもっと知ってもらうことが大切です。ニュースを発信するとか、イベントに招待して、討論するとか、工夫はいろいろと考えられます。幸いなことに日野には「日野祭り」という伝統的なイベントがあります。このときには、遠方の所有者も帰ってきて祭りを楽しむといったことができそうです。

 

(3) みち、寺社、城跡等の歴史的遺産の保存と活用

みち、水路を歴史的な伝統にならって再現する

日野地区のみちは、蒲生定秀が開いた城下町が下敷きとなっているため、防衛上の問題から鉤型、見通しが利かない交差形状、建物が道路に対してジグザグ形状になる「のこぎり」型配置という特徴を備えています。この基本形状は保存すべきでしょう。ただ、舗装は昔は地道(土の道)でした。現代の車社会ではそうもいきませんので、何らかの舗装を行うことが必要です。今、全国の歴史的町並みのみちに関する整備の考え方は、石畳やカラー舖装等は行わずに、地道風の透水性舗装を行い、敷地境界や側溝は御影石できっちり施行することが主流です。日野地区もそれにならったらいいのではないかと考えます。電柱・電線は、歴史的な景観にはそぐわないものですが、大きな財政負担を伴うため、今後の課題とせざるを得ないでしょう。

 

寺社等の保存・整備

寺社といえども基本的には個人的な施設であり、また、宗教施設という特殊性を持っています。したがって、公共的に保存・整備することは難しく、通常は檀家や地域の人々の寄進等で維持されています。ただ、日野地区のシンボル的位置づけを持つ馬見岡綿向神社、信楽院(しんぎょういん)等は重要な歴史的資産でもあります。基本的には、寺社の努力と住民の支援ということになりますが、公共的には文化財の保護、公益面(水路・休憩所・トイレ・公園的機能等)の位置づけによる整備を検討する必要があります。いずれにしても、地域の核的な役割を果たしていくために、寺社と地域とがもっと結び付くイベントや行事を組み立てていくことが必要でしょう。

 

 

 

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