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中野城址付近の保存・整備

地区の東端に位置する中野城址は、日野の発祥のシンボルとなるところです。今は、もみじや木々が鬱蒼と茂り、豊かな自然を有しています。発掘調査も進んでいないことから、遺跡の状況ははっきりしていませんが、今後は調査によって遺構を明らかにしつつ、現在の雰囲気を活かしながら必要な整備を行い、西大路藩邸跡も一体となった歴史公園としていくことが望まれます。

 

6-3 文化と暮らしが息づくまちづくり構想

 

(1) 文化、暮らしの保存と活用

町並みや家屋の保存とともに、文化や暮らしといった面での伝統を守り育てていくことが重要です。日野地区は曳山が繰り出す「日野祭り」、氏郷の産湯の井戸、会津若松の命名のもととなった「若松の森」等の物語性の豊かな地です。また、周辺には「ほいのぼり」が林立する日枝神社の春祭、火振り祭りといった伝統行事も多く残っています。これらの保存・継承を皆の力で行っていくことが重要です。特に、日野祭りは町並みの重要な要素となっている「桟敷窓」と連動し、日野の暮しの伝統を守っていく基本となるものに位置づけられるでしょう。また、蒲生氏郷は商業を奨励し、各地に楽市楽座を設置しましたが、その伝統を日野の地で復活させることも考えるべきでしょう。伝統産業との関わりでは、日野は歴史的に日野椀、薬、日野鉄砲で知られたまちでした。これらの復活、継承も大切なことです。これらは何らかの形で行政的支援も必要と思われますが、その担い手たる地域住民のバックアップが何より大切なことといえるでしょう。

 

(2) 地区の生活環境を整える

地区全体を大きな一軒の家の感覚で

暮していくにおいての地区環境上の問題も多くあります。特にモータリーゼーションの進んだ現代にあっては、車の問題は大きいものがあります。地区内を歩いていても少し危険な時があります。無制限な駐車も問題です。一方通行化や共同駐車場等により、なるべく車の通行量を減らしていく工夫が大切です。しかしながら、拡幅等の大幅な道路改良事業は、城下町の町並みそのものを壊してしまう危険性が大きいものです。完了している河川整備も防災的に安全性は高まったとはいえ、コンクリートの三面張りは味気のない景観と水との親しみを失わせました。今までの町並みと強固なコミュニティを活かして、人と人とのつながりによるソフトなシステムをまちの基本にすることを日野地区の地区環境改善の柱とすべきでしょう。防災や福祉の基本的整備はいりますが、それを活き活きと稼働させることが最も重要です。

 

自然環境の保全と育成

日野地区を特徴づけるものに杜(もり)に象徴される身近な自然があります。中心市街地の一画にこのような環境がみられることは極めて貴重なことであり、自然環境の保存と育成が重要な課題です。水、緑を活かした暮らしがあることは、地区環境にとって素晴らしいことです。水量も減り、井戸もだんだ埋められてきました。緑も減ってきています。しかし、まだまだ多くの水路や井戸が活きていますし、樹木も豊富にあります。これをもっと活かすことができないものでしょうか。まちの暮らしにもっと水と緑を活かして、地区の暮らしのシンボルとしていく工夫が大切です。とにかく一つの井戸、一つの水路、一本の樹木をまずシンボルとして保存・整備し、皆で守り育てることをしたらどうでしょうか。

 

 

 

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