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三島溶岩の末端から湧き出しているこれら湧水が扇状地や沖積層の中に拡散し、この平坦部の東ほど箱根西斜面系地下水の進入、西側ほど愛鷹山系地下水の進入の様子がうかがえる。水質の分布は亀裂性の地下水長距離を流れ、混合が進んだ様相を示し、砂礫層などの堆積岩中を流れる地下水の水質形成とは異なる(渡部1970)。このような水質形成は地下水の水収支を考えるときも重要である。

柿田川における取水井による大量に自噴をはじめ、この地域における地下水の大量利用は、かつて富士宮市浅間神社湧玉池が近くの図書館建設工事の影響で涸渇したように、三島市楽寿園の小浜池の涸渇に深く関係している。

 

(1) 鮎壺の滝

黄瀬川の鮎壼の滝は三島溶岩が形成する滝で、一枚の溶岩の厚さは8mに達し、溶岩の中心部は緻密で湧水しない。溶岩層の上下や重なりの隙間から地下水が湧き出している。鮎壼の滝の上部の溶岩に挟まれる炭化物は9,610年±170年BPを示す。

 

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(2) 菰池(こもいけ)

菰池は三島溶岩流の末端近くの湧水で、三つの湧水口があり年中涸れることはない。溶岩流の基盤までの深さが浅く、下流の地下水利用の影響を受けにくいため、涸渇しにくいと考えられる。200m下流の、やはり三島溶岩流の末端から湧出する白滝公園の湧水とあわせて桜川となって、三島市内を流れる。

 

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(3) 白滝公園

三島溶岩流の末端の湧水で、地表に露出する節理や溶岩の境界から地下水が湧き出す。

 

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(4) 小浜池

楽寿園は明治23年小松宮彰仁親王の別邸として造成され、その庭園内に造られた小浜池はかつては20万m3/日の湧出量があったとされる。

小浜池の湧水は三島溶岩流の末端から湧出していて、年間を通じて15℃という一定の水温や、春から夏にかけて水位が上昇し、秋から冬にかけて水位が低下するという年変化を示すことから、これらの湧水が富士山頂の雪解け水が地下にしみ込んでここまで流れてきて、湧出しているものと古くから信じられてきた。

 

 

 

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