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ケラ・セルジャン村では199名中185名(93.0%)で何らかの寄生虫に感染が認められ、陰性であったのは14名(7.0%)であった。昨年度の陰性者は181名中19名(10.5%)と本年度よりも多かったが、これは新受診者が増えているためであると思われる。ただ全体的にみると、1985年の成績では全検査受診者全員で何らかの寄生虫感染が認められていたのが、1995年での陽性者は94.5%、1999年で89.5%、2000年に93.0%と徐々にではあるが、寄生虫症患者が減少していることが判る。陽性者の内訳は1種類の寄生虫感染者が28名(14.1%)、2種類が42名(21.1%)、3種類が41名(20.6%)、4種類が35名(17.6%)、5種類が23名(11.6%)、6種類が12名(6.0%)、7種類が2名(1.0%)、8種類および9種類の感染者がそれぞれ1名(0.6%)ずつであり、このケラ・セルジャン村での1人平均感染寄生虫の種類は2.98種類と昨年度の3.00種類とほとんど同じであった。

一方、バンザ村では全受診者60名中何らかの寄生虫に感染が認められたのは56名(93.3%)で、寄生虫が全く検出されず、陰性であったのは4名(6.7%)と昨年度の陰性6.2%とほぼ同じであった。陽性者の内訳は1種類の感染者が11名(18.3%)、2種類が13名(21.7%)、3種類が11名(18.3%)、4種類も11名(18.3%)、5種類が7名(11.7%)、6種類が1名(1.7%)、7種類の感染者が2名(3.3%)であり、バンザ村での1人平均感染寄生虫種類は2.87種類と昨年度の3.26種類より少なかった。

 

5) 考察

中央アフリカ共和国では現在も約10ヶ月の給料遅配で政情は流動的ではあるが、今年度も現地の日本大使館および保健省と連絡の上比較的情勢が落ち着いている8月に調査を行うこととした。バンギーに到着後、ケラ・セルジャン村およびバンザ村での検診が可能か否かの検討を行い、昨年度と同様に問題がないとの判断で、初期の計画通りにケラ・セルジャン村、バンザ村およびウワンゴ診療所の検診を実施した。その結果、ケラ・セルジャン村では蠕虫卵の陽性率は厚層塗抹法とMGL法との併用で、60.8%と昨年の39.9%よりも高率であったが、これは新しい受診者が約60%を占めていたためだと思われる。一方、原虫嚢子の陽性率は63.3%と昨年の67.8%とほとんど変わりはみられなかった。また、血液検査の結果は糸状虫ミクロフィラリアの陽性率は11.3%と昨年の陽性率12.3%とほぼ同じで、マラリア原虫の陽性率も57.6%と昨年の60.0%よりやや低率ではあるが、有意の差は認められていない。なお、全検査を受診した人達は185名でその中何らかの寄生虫が陽性であったのは185名(93.0%)と昨年度の89.5%よりはやや高かったが、一人平均の感染種類数は昨年度が3.00種類、本年度が2.98種類であった。なお、本年度は健康手帳保有者と初診者との間で陽性率には有意差は認められていない。これはこれまでに実施した衛生教育が役立っており、新しく越して来た人達に対しても郡長始め一般村民が注意を促しているからだとのことである。一方バンザ村でも新しい受診者が多かった故で蠕虫卵の陽性率は厚層塗抹法とMGL法との併用で、50.8%と昨年の37.1%よりも高率であったが、原虫嚢子陽性者は本年度42.9%と昨年度の64.9%よりも低率であった。なお、バンザ村での血液検査成績を昨年度の成績と比較すると、糸状虫ミクロフィラリア陽性者は昨年度が119名中46名(38.7%)、本年度73名中18名(24.7%)であり、その中ロア糸状虫陽性者は昨年度14名(ll.8%)、本年度6名(8.2%)、常在糸状虫陽性者は昨年度44名(37.0%)、本年度は18名(24.7%)、両種混合感染者は昨年度12名(10.1%)、本年度6名(8.2%)であり、何れも本年度の方が低率であった。

 

 

 

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