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国際保健協力

フィールドワーク・フェローシップ(2000.8)

活動報告書

 

はじめに

 

過去千年間に世界システムは自然条件のみに依存したものから、人間の行動が関与し得るものへと変化を遂げてきました。人間は受動的に自然に左右される存在から、世界のあり方に限定的ではあるものの影響を与えることのできる存在になったのです。そして、盲目的にその影響力が増大し続けた結果、地球規模での環境問題の深刻化という事態を今日招いているのは周知の通りです。このことに対応するように、特に若い世代に地球規模の視点を持ち、責任を持って未来に関わる人材が求められているのではないでしょうか。

 

保健医療についても例外ではありません。来る世紀、人間は生活環境の劣化、人口増加、あるいは少子高齢化の進行、生活習慣病の増加や保健医療システムの不適切化など様々な課題を突きつけられています。今回、国際保健協力フィールドワークフェローシップではこれらの課題を解決すべく線で活躍する方々、及び偉大な業績を残して、なお後進の指導に尽力されている方々とお会いする機会がありました。これらの方々がお忙しい中、我々学生のために時間を割いて下さったのは、次世代の保健医療を担う学生こそ地球規模の視点を持ち、責任を持って未来に関わっていく人材へと成長して欲しいという願いがあってのことなのではないでしょうか。

 

国際保健協力フィールドワークフェローシップという事業は、それ自体が社会に直接的なインパクトをもたらすものではないかもしれません。この事業の目的が直に社会に何らかの働きかけをすることにあるのなら、毎回の参加者は大学院生やこの分野で相当の経験のある人に限定され、周到に準備が重ねられる必要があるでしょう。

 

しかし、この事業の目的は国際保健医療協力に対する理解を深め、ひいてはこの分野に資する人材を育成することにあります。今年も、80名近くの応募者から選ばれた14名の参加者が、それぞれの目的意識と動機付けを持って本プログラムに臨みました。フィールドであまりに劣悪な環境を目の当たりにして覚えたやり場の無い憤り、公衆衛生と臨床の視点の差異に対する戸惑い、何故国際保健なのかという疑問、モチベーションを保ち続けられるかどうかという不安、これら時に困惑を交えた感情は、参加者一人一人が未来に対する責任を考える契機となりました。

 

この報告書には困惑の最中に在りながら、我々学生なりに展望した未来が拙いながらも綴られています。拙さの中に未来を担う若者としての覚悟の一端を見出して頂ければ幸いです。その覚悟を今後の人生で如何に表現できるか、これが本プログラム参加者各々に問われた課題だと肝に銘じたいと思っております。

 

本プログラムは様々の方の御協力の下に成り立ちました。厚生省、国立国際医療センター、国際協力事業団、国立療養所多磨全生園、(財)結核予防会結核研究所、国立感染症研究所、WHO、フィリピン国保健省、その他、大学、NGO関係者の皆様が我々学生の教育のために貴重な時問を割いて下さいました。指導専門家のスマナ・バルア先生からは豊富な経験を基に多くの熱意あるアドバイスを頂きました。

 

また、大谷藤郎企画委員長、紀伊國献三理事長を始めとする笹川記念保健協力財団の関係各位からは様々な面に亘りご支援頂きました。その他、お世話になりました全ての方々に厚く御礼申し上げます。

 

第7回国際保健協力フィールドワークフェローシップ

チームリーダー 佐賀医科大学医学部 江副聡

 

 

 

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