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思い出

目原久美(大分医科大学医学部4年)

 

東京、そしてフィリピンでの研修は、文字通り分刻みの苛酷なものだった。しかし、そのような苛酷なスケジュールも、自分を極限の状況に追いやることで、全力を出し切ることの好きな私にとっては、ちょうど良いとさえ感じられた。その上、夜のミーティング後のミーティングにもほぼ全出席することで、体力と睡眠時間を削り、さらに苛酷な状況へと自らを追いやっていった事も、今となっては良い思い出である。しかし、そのようにして失われていったフィリピンでの私の睡眠時間は、仲間からの助言や将来に対する新鮮なアイデアなど、形を変え2倍にも3倍にもなって私の元に戻ってきた。

私はこの研修を通じて本当に素晴らしい人たちと出会えたと思う。見学先で講義して下さった先生方。現地で案内してくださった職員の方々。研修の事だけでなく、私たちの将来に関する事にも適切な助言を与えて下さった指導専門家の先生方。研修がスムースに行われるように気配りしてくださった事務局の方々。疑問点について同じように悩み、そして、自分の言葉で語る事のできる仲間たち。大分で生まれ、大分の大学に通う私にとって、様々な地域から集まった人たちに会うこと自体が新鮮で、それにより受けた刺激で現在私の中は飽和状態にあり、これをどう処理すれば良いかいまだに分からないでいる。

研修から戻って、私はこの研修で何を得たのだろうと考えてみた。1週間という短い間に浴びるように多くの事を吸収したが、それらは放置されたパズルのピースように、バラバラとまとまりなく私の心の中に転がっている。始めは焦って忘れないうちに少しでも形にしようとした。しかし、焦ったところで具体的なイメージは何も浮かんでこなかった。言葉にしようとするほどそれは逃げていった。しかし、この研修で私は、大きなパズルを作り上げるためのピースを確実に手に入れたのだと思う。これにより完成されるもの、つまり私が将来向かって行こうとしているものは何か、今すぐに答えの出るものではない。少しずつ組み立てられていくのだと思った。このピースはパズルのほんの一部であるかもしれないが、完成形に大きな影響を与えるものになるだろうと感じている。そして更なるピースは、この研修の中で知り合った、多くの人達を通じて、これまでに知らなかった分野からも得る事ができるだろうという大きな可能性を感じる。

私にとってフェローシップに参加した事は、私の知らなかった世界へ目を開かせ、また自分の考えを人に伝わるように表現することで、自分自身の進路、興味ある事について深く考えるきっかけとなったという意味で、ある種のターニングポイントとなったと思う。フェローシップで出会った皆さん、どうもありがとう。そして、これからもよろしくお願いします。そして、このような機会を与えてくださった主催者の皆様、この場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 

 

 

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