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感想

堀内智子(弘前大学医学部4年)

 

昨年、私は残念ながら国内研修のみの参加だった。国内研修では、国際保健協力に対する知識が深まり、海外のみならず国内のこと、また、日本史、世界史など学ぶべきことがたくさんあることを知り視野が広がった。そして、海外のことを学ぶ際に日本の保険制度や地域医療の知識の必要性を痛感した。

昨年の国内研修後、所属する国際研究会で英語の勉強会を行ったり、衛生学の実習では、介護保険やジェンダーについて考えるアンケートを行った。このときのジェンダーに関する知識は、フィリピンで開発と女性の問題を考える際、私の中のものさしとして役に立ってくれたように思う。

今年、再度応募し、国外研修に参加できた。去年に引き続き、推薦してくださった衛生学の菅原教授から参加できることを伺った際、思わず二人で握手をした。喜びもひとしおだった。だが、参加できる喜びより自分の知識不足、英語力への不安は国外研修会が近づくにつれ大きくなった。しかし、体験するものをスポンジのようにとにかく吸収してみよう、問題意識や日本との違いについての理解はミーティングで深めようと、フィリピンヘ向かう機上で決意した。

そして、フィリピンではお話を伺った方々にどんどん質問をした。温かく見守ってくれた今回のメンバーやバルア先生、永井先生といった適切なアドバイスをしてくださる方々に恵まれたからこそ出来たことだと思う。私はミーティングで司会を担当したが、メンバーのそれぞれが、みんなに伝えたいことはてんでバラバラで、話をしているうちにミーティングが12時を過ぎるのもしばしばあった。今回、参加した14人のバックグラウンドは一人一人違い、考え方や感じ方をミーティングの際聞いて比較検討することは、大変面白かった。また、怒涛のようにこなしていくスケジュールのなかで、知識の整理と共有を行うことができた。ただ、全員の意見を取り入れることは不可能なため、話したくても話せなっかた話題もいくつか残ったが、いつかまた会えた時に話したいものだ。

ほぼ毎日行われたミーティングで、14人の個性を、毎日出会ったことをみんなで考えフィードバックしていくことにより、より層理解し合い、いいチームを作っていけたように思う。ちょっとあの暑さが懐かしくなった4月5日、フィリピンの証券取引所がエストラダ大統領を巻き込んだ株価の不正操作疑惑で揺れているニュースが新聞に載っていた。非公開情報を流したり、ブローカー仲間で馴れ合いの売買をしたりするのは、日常茶飯事といわれる。タガログ語でいうパキキサマ(不正でも仲間に付き合う)ウタンナ・ロオブ(恩義)はフィリピンの文化。スペイン支配を受けたラテン系のような国、フィリピンは多くの問題を抱えていた。フィリピンの医療はアメリカを模倣している点が多く、開業医が病院へ出向するシステムをとり、包括的な医療に至らない。宗教上からも難しい家族計画。野菜の少ない食事とビタミン剤志向。見学したRHU(Rural Health Unit)の違いから感じたことだが、地方分権の流れは保健医療の田舎と都会の格差を大きいものとしているようだ。

ラモス大統領後の不安定な政策、クーデターの可能性、低い上下水道の普及率や、ゴミ問題といった問題は山積みしていた。衛生医療の問題のみ独立して解決するのは難しく、社会問題の一つとして捉えることが重要であると痛感させられた。

また、JICAの援助について学ぶよい機会となった。要請が来てから、JICAのプロジェクトが始まるまでには早くても2年もかかる。プロジェクトが終了した後にも地域住民の中に根付くような援助をして行くためには、調査に時間がかかる。

 

 

 

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