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医師は、少なくともうつ病、その他の精神疾患とは考えにくい、仕事が自分に合わないために不適応を起こし、精神的に困惑、混乱した状態であると判断し、正式に届け出て休養をさせ、職場に対しては職種についての配慮を求めるよう指示しました。

その後、人事課と本人、家族が面談し、相談した上で、本人の希望も入れて、研究所へ配置換えになりました。

以後、問題もなく、新製品開発などの仕事につき、成果も上げているようです。

 

考察

職場の仕事に合わないために不適応を起こした典型的な例ともいえます。本文の中でも示しましたが、職場としては適応能力の大きい人を望むというのは無理もないことです。この事例のような性格傾向の人も事実いるわけです。ここでは性格がいいとか悪いとかいうことではなく、限られた職務でしか自分の能力を発揮できない人、あえていえば、適応能力の狭い人はどこの職場にもいると思われます。

本人の希望を聞いたり、本人の可能性を見極めての配慮が、本人のためにもひいては職場のためにもいいであろうことは、改めていうまでもないことかもしれません。

もちろん、このことが将来の昇進などに影響するかどうかについては何ともいえませんが、この事例は、まだ若い人でもありますから、社会的な適応能力を高めていくような、一つのカウンセリング的な対応を本人に勧めることも、将来のためには有益なことともいえます。性格そのものは変わらないとしても、それによってもう少し巾広い人間になれるという可能性があると思われるからです。

 

【参考】

第2巻 10 一次介入とカウンセリング・マインド

 

 

 

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