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女性教師のけがの方は大事に至らず、間もなく治癒しましたが、約3週間の入院中から、夜眠れず、事件のことを思い出すと恐怖心が湧いてくる、身体の震えが止まらない。やっと眠っても、殴られる夢を見るなどの症状が出て、次第に気分もめいってきました。生徒の両親が形式的に見舞いに来ても、かえって恐怖心が強くなるありさまでした。校長や、整形外科の主治医も心配して、入院中から、精神科医のカウンセリングなどを受けさせ、けがの方は問題なく退院しましたが、自宅へ帰っても、前述の精神症状は続き、教師としてやっていく自信もなくして、ますますうつ状態が強くなってきました。

とりあえず、休職し、夫のサポート、職場も暖かく見守りながら、精神科医への通院加療も続け、3ヶ月ほど経ったころには、少しずつ落ち着きを取り戻しはじめ、教師の仕事に戻ろうかという気持ちにもなってきました。しかし、どうしても今の学校へ戻ることには、恐怖や抵抗感が抜けず、校長としても、赴任したばかりで残念だが、事情が事情であるからと、教育委員会とも相談し、翌年4月に他の学校へ転勤となった。はじめのうちは自信がなかったものの、次第に通常の授業もできるようになってきました。

しかし、精神科への通院はその後も一年余り続いています。

 

考察

このような事例は必ずしもまれではないかもしれません。

PTSD(心的外傷ストレス傷害)の条件を全て満たしているかどうかには、多少問題はありますが、広く考えれば、このカテゴリーに入れていいかと思われます。

PTSDに対しては、カウンセリングを主としての治療が主体となり、心的外傷の程度にもよりますが、数ヶ月である程度以上に回復すると考えられています。

 

 

 

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