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宮川幸夫(みやかわゆきお)

(昭26.6.30生 福岡県北九州市)

 

平成3(1991)年に「北九州義農の会」を設立、「車いすいっぱいの夢と想い出を」を基本理念として、ベッドツーベッドの移送サービスを中心に、介助がなければ外出が困難な高齢者や障害者の社会参加をきめ細かく支援・促進されている。

昭和63(1988)年頃から会社員であった宮川さんは、民間団体で移送サービスのボランティアを行っていた。サービスは有効ではあったが、利用者側にとっては制約があった。高齢者や身障者の生活により密着し、彼らの社会参加へとつながるようなサービス提供の必要性を痛感した。この夢を実現するため、平成3年に退職して「北九州義農の会」をひとりで設立し、リフト付ワゴン車を購入して高齢者や障害者の移送サービスを始めた。

同様の活動を行う団体が全国にたくさんあるなか、義農の会のサービス内容は他と一線を画している。移送支援の方法は、ドアツードアではなく「ベッドツーベッド」で、移動の最初から最後までをしっかりと介助する。活動エリアである北九州市は斜面地に立つ住宅も多く、長い「階段道」のために、ベッドから車までの移動は平地に比べ、大変な労力が必要になる。会のスタッフは病弱な利用者をときには背負って車まで連ぶ。このため、スタッフは全員が男性である。

最初の頃は、他団体から「無茶ではないか」とか「いつまで続くか」とも言われたが、他団体の移送サービスから敬遠されていた斜面地の高齢者や障害者の方々が、義農の会のサービスによって通院先や買物先まで自分で出かけられるようになり、社会参加による生き甲斐ができ、家族の介助負担も軽減されている。また、休日にはバスハイクも実施し、貴重なレクリエーションの機会として好評を得ている。

生活の全てをかけた宮川さんの献身的な姿勢には共感する若者たちも多く、会の専従として8名が加わり、それ以外にも多くの人がボランティアとして参加するまでになっている。会で働く人たちには金銭的報酬はなく、皆の熱意が会の運営を支えている。また、宮川さんが義農の会の活動に専念できるよう、夫人が全面的にサポートをしている。

会のサービスを定期的に利用する会員の数は年々増加し、当初の約30人から現在では約650人になっている。1ヶ月あたりの利用申込みは1,000件を越え、全国でもトップクラスの実績だが、会員の年会費は2,500円、利用料は1kmあたり50円と、利用者の負担額を非常に安く抑えている。公的な補助金は、活動が制約を受けるという理由から得ておらず、民間団体の助成を受けるのみとなっている。

現在、義農の会の活動内容は、宮川さんの豊かな発想とリーダーシップのもと、障害者の職場づくりのための小規模作業所の設立・運営、外出する気持ちを育むための理美容師・按摩師派遣サービス、住宅のバリアフリー化のための改築サービスなど、多方面に渡っている。

(志賀勉 推薦)

 

 

 

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