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2000年2月、パナマ船籍の日本タンカー『グローバル・マーズ』がマラッカ海峡でシージャックされた。銃で完全武装した海賊は、船員17人をいったん人質にとったが、約2週間後に解放した。この際売れば値のつく旅券や船員手帳さえ船員に返し、エンジン付ボートを用意。殺さない海賊を印象付けたものではと解されている。」。そして、平成12年度の海上保安の現況(9月)では次のように述べている。「最近では11年10月に発生したアロンドラ・レインボー号事件をはじめとして、武器を所有し、乗組員を放り出して船体ごと奪い取るような被害も発生しており、手口が凶悪化している。アロンドラ・レインボー号事件においては、船体は、インド西方海域を航行中のところをインドコーストガード等により捕捉されたものの、積載していた積荷のアルミインゴット約7000トンが半分以下となっていた。また、船名と国籍は変えられていた。さらに、アロンドラ・レインボー号の積荷の一部と思われるアルミインゴットは第三国のフィリピンで発見された。こうした例に見られるように、消息不明となった船舶や積荷が後日第三国で発見されたり、船名、国籍が変えられている状況等から考えると、襲撃事件の影には、強奪した船の売却、船籍の変更、積荷の売却等を行う国際シンジゲートが存在することが推察される。このように海賊は、国際的なシンジゲートと関わっていると思われ、犯行後の逃走範囲も広域化していることから一国のみでの海賊対策には限界があり、関係国の連携が緊急に求められている。」とする。そして、海賊問題を解決するためにとして、「アジアの海域は、公海上だけではなく、領海内または群島水域内で発生し、同時に複数の国にまたがる複雑な事件が多い。また、背景には国際的なシンジゲートが関係していると推察される。このような国際問題に対応するためには、関係国間の協力・連携が必要である。」としている。

さて、このような海賊の態様については、個々の報告事例によって異なっていることは当然であるが、類型化すれば次のように整理できる。

・小型ボート等によって、航行中の貨物船に接近し、数名から十数名程度で、ナイフ、拳銃等の武器を携帯して侵入する。

・乗組員をブリッジや機関室等に拘束する。

 

 

 

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