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海賊問題対応の問題点

 

海上保安大学校教授 廣瀬肇

 

1. 最近の海賊事件について

2000年1月25日付シッピングタイムスに掲載されたIMB(国際海事事務所Internatioal Maritime Bureau)関連の記事によると、「1999年の海賊発生件数は285件。この内インドネシアで発生した事件は全体の3分の1以上である113件で、1998年(60件)のほぼ2倍の海賊事件報告があったとされる。98年には1件のみであったシンガポール海峡でも99年には13件の被害があった。そして、その他の地域での発生状況は、バングラディッシュ23件、マレーシア18件、インド14件、ナイジェリア11件である。IMBは、海賊事件の発生件数は増加しているものの、乗組員が殺害されたケースは3件に減少(98年は78件)したと述べている。99年には、アロンドラ・レインボー事件などがあったが、ハイジャック事件は15件(98年)から8件に減少した。2000年1月10日から17日の間に6件の報告があり、この内1件ではマラッカ海峡で武装した海賊が船に乗り込もうとしたが未遂に終わった。海賊事件は今後も続出すると思われる。」としている。2000年4月27日付の毎日新聞「ニュースの焦点」でも、次のように解説を加えている。それは、「アジアを中心に『海賊』が横行している。日本関連船舶の被害だけで昨年は34件、約13億に上った。世界の被害件数が過去最悪の285件に達した反面、増える一方だった被害死者数は、前年の78人から3人に激減した。『殺さなくなった海賊』は何を意味するのか。…これまで船員を海に放り込んだり、すぐ殺すケースが多かった(1)海賊の手口に大きな変化がでてきた。

この変化について、IMBは、1998年の中国のシージャック事件が転機になったという。23人の船員が殺されたこの事件で、中国当局は海賊13人を捕らえて、全員を処刑したからだという(2)。それ以来海賊は船員を殺さなくなった。シンジゲートに情報が行き渡り、捜査逃れのため、綿密な計画を立てるようになった、とIMBは分析する。

 

 

 

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