日本財団 図書館


国内に流入している覚せい剤のほとんどは、海外から海上ルートによって密輸入されていると考えられていることから、これらを水際で阻止することが大変重要である。このため、海上保安庁では、警察、税関等の関係取締機関と連携しながら、巡視船艇・航空機を活用し、有効且つ効果的な水際取締りを行っており、11年については、覚せい剤の押収量が全国で約2トンと過去最高を記録するなど、連携の強化による効果が現れている。

しかし、このような海外から海上ルートを通して我が国に流入する薬物・銃器の取締りについては、一国の取り組みで十分な目的が達成されるとはいえず、このため海上保安庁は、これらの問題への対応策の一つとして、海外の取締機関との協力・連携について強化を図っている。

特に、アジア地域の外国取締機関との間では、中国の公安部辺防局、ロシアの国境警備庁及び韓国の大検察庁や海洋警察庁をはじめ、各国の関係取締機関との情報交換の場を拡充する等、積極的にネットワークの構築を推進している。

また、海上保安庁は、国連経済社会理事会の機能委員会の一つで麻薬等の国際統制に関する意思決定の中心機関である「国連麻薬委員会(CND)」や薬物関係国際条約の適正な実施を確保し国際薬物統制における指導的役割を担う「国連薬物統制計画(UNDCP)」の活動に積極的に協力しており、8年9月には「UNDCPクロアチア薬物対策調査ミッション」へ専門家を派遣、9年10月には横浜においてUNDCPと共催で、15カ国32名の参加の下、「アジア太平洋海上薬物取締研修セミナー」を開催したほか、各種国際会議等へ出席している。

これら国際会議への出席や国際活動を背景として、海上保安庁では運輸省が行う省庁別ODA事業の1つである「薬物海上取締官養成事業」に前記セミナーのフォローアップとして参画、平成10年度から2年間、東南アジア諸国等を対象とした9カ国13名の研修員に対し、薬物取締りの知識・技術の養成をおこなった。

さらに、平成12年1月には、「2000年薬物対策東京会合」の一環として東京及び横浜において、「薬物海上取締官養成セミナー(MADLES 2000:Maritime Drug Law Enforcement Seminar 2000)」を開催し、中国、フィリピン等、東・東南アジアの9カ国から13名の海上薬物取締官の参加を得て、UNDCP作成の「海上薬物取締トレーニングガイド」に基づく実習、相互の情報交換、域内協力についての検討等を行った。

平成12年7月には、JICA専門家派遣事業として「海上薬物取締りセミナー」を設定し、フィリピンに短期専門家2名を派遣、派遣国の海上警備機関に我が国の薬物取締りの技術を移転すると共に、各国との連携強化に努めている。

今後、なお一層各国の関係取締機関とのネットワークの拡充を積極的に推進していくとともに、あらゆるスキームを活用し、東南アジアを中心とした国々における取締官の人材育成や支援等を推進し、海外からの情報の収集等に努め、薬物・銃器の水際での流入阻止に向けて積極的に対策を講じていきたいと考えている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION