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こうした各国に対する捜索救助体制の強化支援は、アジア海域における捜索救助体制の強化・連携を促すものであり、海賊問題を始め、多量の油、危険物を積載した船舶の大規模海難への迅速かつ的確な対応に大いに役立つものである。海上保安庁は、世界有数のSAR先進機関として、アジア海域における捜索救助体制の確立に向けたイニシアティブをとり、重要な役割を果たすべく、今後もアジア各国に対する適切かつ効果的な支援を継続するよう努力していきたい。

 

2. 海洋汚染の防除の分野

環境保全問題は、一国のみの対応ではなく地球環境保全という観点からグローバル化しており、海上防災関連に関する国際的な動向も、近年、特に近隣諸国との連携を強める方向で進んできている。

海上保安庁では、JICA専門家派遣事業として、インドネシア(平成9、10、11年度)、フィリピン(平成11年度)、パナマ(平成11年度)の海上保安機関に海上防災技術の短期専門家を2週間から1ヵ月派遣している。当該事業は海上防災技術(主に海洋汚染防除技術)の移転を主眼としており、専門家は本庁海上防災課及び横浜機動防除基地から適任者を選抜している。

JICA集団研修事業については、海難救助の分野と共に「救難・防災コース」を設定し、昭和57年から実施しており、平成11年度までに29カ国から118名の研修生を招聘している。研修は神戸にあるJICA兵庫インターナショナルセンターを中心に実施しており、第五管区海上保安本部の職員を中心に救難及び防災について技術移転を行っている。

また、運輸省が行う省庁別ODA事業の一つである「海上防災対策協力事業」にも参画し、ASEAN各国を中心とする我が国オイルルートの沿岸国から海上防災当局の関係者を、平成8年度から11年度までの実施期間に11カ国から64名を招聘し、海上災害防止センター横須賀訓練所において、海上防災技術(船舶火災消火、油防除)の技術移転を実施している。

海上防災の分野における国際的な動向は、前述のとおり近隣諸国との連携を強化する方向に進んでおり、平成8年1月に我が国に効力が発生した「1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約(OPRC条約)」には、技術協力の規定が設けられ、人員訓練に関する技術支援、油汚染に関する技術移転について、積極的に協力することを定めている。

 

 

 

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