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委員会報告に対して、指名討論者の上田教授(近畿大)から、主として理想化構造要素法の適用性について討論があった。これに対しては、委員会として理想化構造要素法が優れた解析手法であることは十分に理解しているが、現状では最終強度後の塑性変形の局所化や防撓材のトリピングなど、実際の崩壊挙動を表す防撓パネル要素が開発されていないとの理由により、Smithの方法を最良とした旨の回答がなされた。また、Prof. Paik (韓)とProf. Hughes (米)からも、理想化構造要素法に関する同様の討論があった。この他に、Prof. Sun (中)からは腐食および疲労亀裂の影響を考慮した縦曲げ最終強度の信頼性解析に基づく評価が重要性であるとの指摘と、ベンチマークで対象とした船体に対する自らの計算結果の紹介、Mr. Quesnel (フランス)からはクルーズ船のように大きな上部構造を有する船体を対象とする場合の、断面平面保持の仮定の妥当性に関する疑問の提示、Dr. Pu (英)からは感度解析の結果に対する討論があった。最後に、Dr. Pegg (カナダ)から、このような特別任務委員会は重要であり、引き続き2003年のISSCにおいて、疲労関係の特別任務委員会が設けられたことは妥当である旨のコメントがあった。

なお、会議終了後にE-mailにてDr. Frieze (英)より、防撓パネルとしての局部強度を考える際の、パネル周辺の面内変位の拘束条件に関する考察の重要性に関する討論が寄せられた。(矢尾哲也)

 

4. 開会式、閉会式及び歓迎行事

(1) 開会式(10月2日)

初日午後開会式が行われた。永年ISSCの委員、委員長、理事を務められた上田幸雄教授による歓迎の挨拶が行われた。この中で、上田教授は日本の国際交流の歴史と長崎のgatewayとしての役割について触れられるとともに、21世紀のgatewayである現在、海洋環境における構造問題の重要性やISSC活動の社会への還元の重要性に対して我々は十分な解答をもって新世紀に入ろうとしているのであろうか?その解答が本会議で得られる事を確信していると述べられた。その後、大坪議長が本会議の成功を期して開会宣言を行ったのに引き続き第1セッションTechnical Committee I.1 Environmentの技術委員会報告が行われ、5日間の会議が開始された。

(2) 基調講演と閉会式(10月6日)

最終日のPlenary Sessionにおいて(財)日本海事協会会長間野忠氏による「海運、造船そして船級−最近の事情」と題する基調講演が行われた。この中で、間野氏は御自分が60年代に経験された原子力船の極めて困難な開発経緯から説き起こされ、次いで最近の船舶の低船価の安全性への影響に対する懸念、このような状況に対する船級規則の役割と規則の統一、さらにエリカ号事故を契機に強まっているサブスタンダード船排除問題、船舶の解撤における経済的問題について述べられた。

基調講演の後引き続き、総会が開催されISSCの規約の改正、ISSC 2003の新しい委員会のmandateと委員構成が発表された。最後に、大坪議長から本会議がすべての面で成功したことについて参加者全員に対する謝辞が述べられ、5日間の会議を閉幕した。

(3) 長崎市長主催レセプション(10月2日)

日蘭交流400年の記念の年、鎖国時代に西洋文化の唯一の窓口であり、その中でも造船と係わりの深い長崎のグラバー園でISSC 2000のレセプションが計画されたことには、何か歴史的なつながりを感じる。2年前からこの園内で屋外開催する準備を行ってきたが、会議初日の午後から小雨となり、近くの東急ホテルのグランドホールにて開催することとなった。まず、大坪議長より開演の挨拶があり、続いて主催者の伊藤長崎市長のウイットに富んだ挨拶があった(写真3)。久々に再会した出席者同士の話が弾んでいたが、活水学院中高生によるハンドベルの演奏が始まると出席者全員瞬時に静まりかえり、この演奏に聴き入り演奏終了後、「非常に素晴らしい」との絶賛の拍手が興った。その後、長崎大學の合唱団「ロマンツア」による合唱が行われ、大坪議長の「中締め」で流れ解散となった。このレセプションの雰囲気は好評であった。

 

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写真3 伊藤長崎市長のレセプションにおける歓迎挨拶風景

 

(4) テクニカルビジット(10月4日)

会議3日目15時より三菱重工業長崎造船所および長崎研究所見学のテクニカルビジットが催された。まず、バス6台で長崎造船所史料館に到着し、岩崎家の歴史、軍艦・商船・客船の建造および原動機の歴史等を見学したが、日本の造船の歴史そのものであった。次に、香焼工場に移動し、バス車内から切断工場、小組立工場、先行艤装工場、塗装工場、100万トンドック(LPG船、LNG船建造中)、アルミタンクの順で見学した。

 

 

 

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