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お部屋から見るお庭は、おばあちゃの好きな景色です。

隣の部屋のおじちゃんは絵がすごくうまくて、ボランティアさんが開いている絵の会で先生役をしています。このおじちゃんと知り合ってから、今まで絵を描いたことのないおばあちゃが毎日楽しそうに絵を描くようになりました。ある時おばあちゃは、「みんなになにもしてあげられなかったからこの絵を残すよ」といってとてもすてきなお花の絵を描いてくれました。私たちの大事な大事な宝物です。おばあちゃ、絵に出会えてよかったね。

 

シャトルバス

 

帰りのシャトルバスに乗ると、行くときは無口だったお母さんが運転手のおじさんにしきりに話しかけました。おじさんは「それはよかったですね」と言いながら笑顔でハンドルを握っていました。

今日は、おばあちゃとお母さんと一緒にお歌を歌ったり、おいしいお菓子を食べたりしてとても楽しいお見舞いでした。

駅に着いたので、「おじさんありがとう」と言うと、「またおいでね」と言って握手をしてくれました。お母さんは献金箱にお金を入れ、お礼を言って私の手を引いてバスを降りました。

 

一緒に食事

 

おばあちゃが入院して一週間がたちました。私が一番心配していたのは、おはあちゃがここのごはんがちゃんと食べられるかなということでした。

でも、この間食堂でみんなが一緒にお昼ご飯を食べていたとき「ここのご飯はうちのご飯みたいね。それに、少しのみこみにくくなったおばあちゃのために食べ物を工夫して出してくれているのよ、量もちょうどいいでしょう」とお母さんが言いました。

「久しぶりにみんなと一緒に食べるとますますおいしいよ、おばあちゃの分までたくさん食べて大きくなってね」おばあちゃもにっこり笑いながら言いました。私もなんだか嬉しくなってほっとしました。

今度の日曜日、ここのファミリーキッチンでお母さんと一緒に、学校で習ったばかりのオムレツをおばあちゃに作ってあげようかな。

 

押し花

 

お昼ご飯の後に「今日は押し花の日だから一緒に行ってみる?」とおばあちゃが言いました。この前、私に送ってくれた、お花のついたハガキを作るのだそうです。ホールのテーブルの上には、色々なお花がいっぱい並べてあって、男の人一人と女の人二人が、ハガキの上にお花や葉っぱを並べていました。

私は、ピンクのハガキに赤と、紫と、黄色のお花を並べて、葉っぱもつけました。そこにいたおばさんが「あら、上手ねー!」とほめてくれました。

お家に帰ったら、これでおばあちゃにお手紙出そうと思いました。お母さんはクリーム色、おばあちゃは水色のハガキを作りました。

他にも歌を歌ったり折り紙をする日があって、おばあちゃは楽しみなんだって。

楽しいことが、たくさんあっておばあちゃが寂しくなくてよかったと思いました。

 

家に帰る

 

入院して、何回かお見舞いに行ったけれど、少しずつおばあちゃが元気になっているのがわかります。ある日、お母さんに「おばあちゃ、お家に帰ってこないの?」と尋ねると、お父さんも「今ぐらいの調子だったら帰れそうだね」と言ってくれました。

でもお母さんは、帰ってきてほしいけど、心配なようです。そこで、お母さんは先生や看護婦さんに相談すると、家まで看護婦さんが来てくれる訪問看護があると教えてくれました。訪問看護婦さんは家に来て、体の調子をみてくれたり、お風呂に入れるお手伝いをしてくれたり、いろいろと相談にのってくれるそうです。

お願いするとさっそく訪問看護婦さんが病室に会いに来てくれました。

 

 

 

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