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ごあいさつ

 

ピースハウスが日本における最初の独立型ホスピスとして発足したのは1993年の秋であり、今年の9月で満7年となる。この施設を始めるに当たり、私が有志の方々と一緒にホスピス見学のために近代ホスピスを世界で最初に計画した英国に旅したのは1986年、14年も前のことであった。シシリー・ソンダース医師が独立型ホスピス第1号をロンドンの郊外に建てたのは1967年であり、日本で第1号の緩和ケア病棟(病院の中のホスピス病棟を緩和ケア病棟 Palliative Care Unit、PCUという)が浜松の聖隷三方原病院に作られたのは1981年のことであったから、日本は英国に比べるとその発足は15年近くも遅れた。その後、淀川キリスト教病院、救世軍清瀬病院などにも次々と作られたが、そのすべては病院内のPCUであり、独立型ホスピスとしては私たちのホスピス、ピースハウスが最初のものであった。

ピースハウスの建設には14億円もの費用を要したが、その基礎となるものは5,145件もの方々からお寄せいただいた寄付であり、2000坪の敷地は湘南観光開発株式会社の大森正雄会長のご厚意になるものであった。

ピースハウスも7年の月日を経ると、あちこち手を加えるところが出てきた。建設当時はトイレとシャワーは2部屋で共用するという構造になっていたが、それを部屋ごとにトイレを備えるように改装するなどして使いやすくなってきた。誕生以来、一年一年と歴史を重ねていく中に、患者さんの残された最後のいのちを大切に考える全スタッフのチームによる協力がだんだんときめ細かく行われるようになってきたのはたいへんうれしいことである。

また、私たちのホスピスでは、医療従事者の教育だけでなく、ボランティアの教育も熱心に行っている。その中心となるホスピス教育研究所は、将来わが国のホスピスや緩和ケア病棟で働くホスピスナースを養成するために、日本財団および日本看護協会と提携したプログラムを実施しているが、そのような教育的ミッションに貢献していることも喜ばしい。そして本年10月には3年に一度行われている世界40カ国以上が参加するホスピスムーブメントBT VfH (B. T. Voices for Hospices) 2000に、日本からはピースハウスが参加し、ホスピスケアの手がゆき届かない各地域にも精神的、経済的支援を呼びかける運動の輪がハレルヤの歌声に乗って世界各国に発信される。

このような着実な活動を支えてくださった多くの方々に感謝申し上げるとともに、今後も温かい支援のお気持ちを寄せていただけることを祈念したい。

 

理事長 日野原重明

 

 

 

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