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徹底的に自分たちのあり方を問うところから出発し、設立までの事前討論に2年半を費やしました。私は、若手医師の会に入っていなければ、そして、日野原先生にご指導いただかなければ、このような経緯をたどって開業はしなかったと思います。

私としては「あおぞら」が、往診という外に出る医療をイメージさせる気がして、この名がとても気に入っています。青空にあやかって、同僚の前田医師や川越医師、また藤山事務長が青いロゴマークを作ってくれました。さらに、往診用自動車も青い車を購入しました。この名称は、個人名や地名ではなく、固有性が高いことも気に入っているところです。

 

そして開業後

いま、私たちは定期的な訪問を主体とする「在宅医療」を行っています。これは、継続加療を必要としますが、通院が困難なほどにADLが低下し、しかも、病院や施設ではなく、あくまで自宅にいたいという意思を持った方々への診療です。従って「在宅医療」は以前より行われてきた急性疾患に対する「臨時往診」とは質的には全く異なります。50年前には急性疾患に対する治療は、自宅と外来では大きな医療水準の違いはなかったかもしれません。しかし今では、検査手段を駆使して行う外来のほうが、はるかに医療水準が高いことは疑いようのないことです。従って、初診の急性疾患の往診依頼は、基本的には遠慮させていただいています。実際には、私どもに初診で(小児を含め)急性疾患の往診を依頼される方はあとをたちませんが、救急外来のほうが医療水準が高いことを説明したうえで対応を決めています。病院が嫌いで、どうしても自宅にいたいという人もおり、そういう方には初診でも往診を考慮しています。もちろん、私どもで継続加療中の患者さんの急性増悪、合併症発生には逐次往診で対応しています。

 

地域に根づいた在宅医療を

これまで、私たちは松戸で百十余名の患者さんに出会わせていただきました。私たちには重症者や悪性疾患の方が紹介されることが多く、すでに50名近くの患者さんが亡くなられ、今診療させていただいているのは60名程度です。松戸で在宅医療を行ってみて、この地の在宅ケアが実に未開拓であることを知りました。在宅医療を先進的にやっている医療機関もありますが、比較的少数で、ニードを満たすには全く至っていません。すでに足立区や葛飾区では出会うことができないような患者さん、例えば、背部一面に褥瘡があっても医療機関にかかってない方とか、医療機関を退院して中心静脈栄養を行っていながら、数か月病院にかかってない方(家族が輸液ボトルだけを処方してもらいに病院に通っていた)とか、10年間寝たきりにもかかわらず医療機関にかかったことがなく、全身の筋肉が萎縮してミイラのようになってしまっている方などに出会って驚いています。24時間対応する訪問看護ステーションもわずかで、訪問看護を受けている多くの患者さんたちが、夜間は自分で(救急病院に行くなどの)対処をしなければならないのです。この地では、まず、24時間対応する看護婦を増やすことが急務のように思います。

また、松戸では女性に依拠した介護関係が依然として残存しており、介護者はほとんどすべて女性に限られています。しかも「嫁・娘のプライド」として、介護する家族からみると、訪問看護婦・身体介護者などを自宅に入れて援助をしてもらうのに強い心理的抵抗があるようです。このためか、女性介護者に負担が集中し疲労を重ねていても、在宅ケアが介入しにくい印象があります。

このようなわけで、私たちは松戸での在宅ケアをどう底上げするかを考えるようになっています。これからも、諸先輩方にご相談したいと思いますので、よろくお願いします。

 

あおぞら診療所

〒271-0004 TEL(047)369-1248

千葉県松戸市緑ヶ丘2-337-2

 

 

 

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