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地域医療と福祉のトピックス その34

 

往診・訪問診療専門

あおぞら診療所の活動

あおぞら診療所 和田忠志

 

はじめに

2人の医師と1人の女性(藤山事務長)と共に往診・訪問診療専門の「あおぞら診療所」を設立し、約1年半が経過しました。私を含めこの4人は、「21世紀の医療をつくる若手医師の会(若手医師の会)」というボランティアグループで、医療や医師研修について考えてきた仲間です。先日はLPCの国際フォーラム『早期退院患者ケアのマネージメントに必要とされる技術とその教育』にもお呼びいただき、貴重な学びの機会をいただきました。今回、寄稿の機会をいただいたので、私たちの活動と在宅医療に関し、紹介させていただきます。

 

設立までのいきさつ

私は、若手医師の会というグループで医師研修問題を中心に活動してきました。この活動は、常に日野原先生から暖かいご指導とご支援を頂きながら行ってきたものです。活動の詳細は以前本紙(Vol.23、No9、1997)に掲載していただいたので、ここでは簡単に触れるにとどめます。

日本では、医学部の学生は膨大な医学知識の吸収に追われ、卒業時の診療能力はきわめて低い状態にあるといえます。このため、医師は卒後数年の訓練によって実地経験をつみながら診療能力を獲得していくことになります。この状況に対し、若手医師の会では、シンポジウムや出版活動、個別の研修相談を通じて、医学生や若手医師に対し、良質な研修情報を提供するとともに、そのときどきの厚生官僚に対し一貫して、臨床研修の改善を訴えてきました。

私は、14年前、医学生の時にこの会に入会しましたが、当時は、精神科医であり社会運動家である松原雄一医師がリーダーでした。

 

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診療所のスタッフ 川越先生、前田先生、和田先生

 

松原医師が会を創設時に取り組んだのが研修問題でした。そして私が研修医になる頃、「会で研修問題をやらないか」と誘ってくださいました。このとき松原医師は今の私と同年代でしたが、「医者をやって10年くらいたつと、研修問題などはなかなかできなくなってくるんだよ。だから君にお願いしたい」また、「臨床医として10年くらいたつと、開業とかそういうことに興味が出てくるもんなんだ。和田君も、その時になればわかるよ」とおっしゃいました。松原医師は、ご自分の言葉どおり、「青空診療所」という診療所を東京・本郷の若手医師の会の事務所に併設しました。しかし、その後、残念ながら、松原先生は志半ばで病に倒れ、青空診療所も廃業をやむなくされました。

松原先生が予見したとおり、私も医師になった頃には研修問題を中心に考えてきましたが、10年もたつうちに開業に興味をもつようになりました。単に学ぶ立場ではなく、実践を試すべき年齢にいたったということなのかもしれません。私たちは、研修問題から発展し、日本において「主治医」はどのような医師であるべきかという問題に直面しました。そして、身をもって「主治医」を体現するためには、開業するしかないという解答に辿り着き、「あおぞら診療所」を開設しました。

 

 

 

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