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教育医療

Health and Death Education Jun.2000 vol.26 No.6

 

LPクリニクにおけるナースの役割

 

私は、17年前にはじめて(財)ライフ・プランニング・センター(LPC)の、サイエンスとアートを見事にマッチさせた外来医療に出会い、感動したことが忘れられません。その医療を支え、指導してくださっているのが日野原先生で、これまでに多くのことを学びました。

そのなかでも私が特に先生から学んだことは、1]人との出会いを大切にして、患者さんから学ぶこと、2]誰に対しても一生懸命であること、3]目的をもって継続していくこと、4]いつも前向きであること、5]そしてほんの少しの無理をすることでした。私がナースとして役割を果たす上で、最も大切にし、行動しようと心がけていることです。

LPクリニクでは、ドック、健康診断、内科外来を中心に多岐にわたる外来診療が行われています。それらの外来診療を通して、私達コメディカルは多くの知識と情報を習得し、さらに外来のケアへと生かしていくよう努めています。

LPクリニクにおけるナースの重要な役割の1つに問診があります。ナースは患者さんの受診の意図を理解し、担当する医師へ的確に伝えることが求められています。問診の時にはケアに必要な情報収集を行い、時間をかけて症状や病歴、生活環境、生活習慣などを聞き、受診の目的を確認していきます。さらに治療開始後や、慢性に経過している患者さんは、その度に新たな疑問や問題が生じてきます。その際にもナースがインタビューや電話による相談を受けて状況を把握し、主治医と相談のうえ臨機応変に問題解決に向けて対応しています。またLPクリニクを受診する患者さんは、圧倒的に生活習慣病が多く、この方たちには疾患に対する理解とその生涯管理を学んでいただくことが重要です。そのための患者教育と指導もナースが中心に進めています。患者さんからの相談を受け、問題を評価していく度にナースは多くを学び、さらに患者さんとの信頼関係を深めていくことができます。日々のその繰り返しが、現在行われているプライマリケアへと繋がってきていると思います。

LPクリニクでは医師やナースだけではなく、多くの専門職が職域を越えて患者さんの問題解決に当たっていますが、相互の関与を調整する必要があり、そのためのコーディネーターとしての役割もナースが果たしています。

私はこれまで多くの患者さんとの出会いによって学んだことを糧に、今後も、患者さんの健康管理上の支援者の一人として、さらにナースコーディネーターとして経験を重ねながら、その役割を果たしていきたいと思っています。

最後に、オスラー博士が1891年、ジョンズ・ホプキンズ看護学校の卒業式で、ナースへ贈った言葉を紹介したいと思います。

 

皆さんの人生は幸せなものとなるであろう。あなた方は多忙で、有用な人間なのだから。魂を満たしてくれる職業に没頭することにこそ幸福は存在する、という幸福の奥義を授けられたのであるから。さらに言い換えるならば、われわれの存在は、「人生から」何かを与えられるためにあるのではなく、自らができることを「人生に」与えるためにあるのだ、という人生の奥義を授けられたからには。

ウィリアム・オスラー

『平静の心―オスラー博士講演集』より

LPクリニク副所長 佐藤淳子

 

 

 

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