ボランティア特集
ボランティアフォーラム報告
ボランティアマインドで拓く医療と福祉の明日
去る3月8日、川崎市、川崎市教育委員会、川崎市社会福祉協議会の後援を得て、ボランティアフォーラムを開催いたしました。川崎市は全国的にも福祉行政のモデル都市とされているところです。会場となった溝の口駅前のノクティ2ホールも、障害者席や動く歩道など障害者の方への配慮をいたるところで感じました。
このフォーラムの概要をご紹介いたしましょう。
援助者としてのボランティアに期待すること
中村敏秀 講師 川崎市健康福祉局障害保健福祉部
明望園園長
はじめにボランティアについての基本的な事柄についてお話しくださいました。まず個人のボランティアの基本的条件として、自発性、無償性、公益性をあげられました。また理想的なボランティアの活動条件としては、創造性(新しい価値を創造する場)、先駆性(社会発展の先駆け)、相互性(チャリティ色の濃い活動は援助者の依存を高める)があることが望ましいと話されました。しかし、理想的条件のすべてを兼ね備えている場を求めることは難しいことです。与えられた場で、ボランティア自身が理想的な条件を満たすよう変革していく努力も必要です。
次に、社会に参加するボランティアの公的役割を考察しました。1]人間の存在条件としての公共性(企業や社会に埋もれた没個性の回復)→人間としての尊厳、自立性をもった個として、互いに認め合う(相互承認)関係。2]社会における専門主義の破綻→人間としての本来の欲求に基づいた行為、バランス感覚の回復。3]代理主義の限界→行政等に委ねるのでなく問題の発見や解決は社会を構成している人々が自ら判断、行動する。4]市民的公共性→自己の利害を離れた無償の立場からの批判や提言。
ボランティアは政府や企業や公衆に政策提言をしますが、本来は自ら実行して問題解決にあたるものともお話しくださいました。
施設での経験から
中村先生は、身体障害者授産施設明望園の園長として、ご多忙な日々を過ごされています。その経験から施設ではボランティアに期待することがたくさんあるといいます。外出や買い物の付き添い、手芸・書道・絵画の講師、レクリエーション指導、理容・美容など、特に利用者の生活の楽しみを広げるためには、ボランティアの力が欠かせないとおっしゃいます。
「ボランティアは閉鎖的空間に陥りやすい施設に外の社会の風を運んできます。また施設内の情報を社会に伝える広報の役割を担ってくれます。施設にとっては、これはなかなか怖いことでもありますが、ボランティア活動を取り入れることが外に対して開かれた施設ともなり、ボランティアがいるかいないかということも、その施設の評価を決める1つのポイントになります。」
施設におけるボランティア活動
「40歳過ぎのある女性は、テレビのトレンディドラマに出てくる原宿の竹下通りをショッピングして歩きたいという願いを持っていました。これに19歳の女子学生が付き添い、永年の夢を実現しました。利用者は、親でも兄弟でもない友達と一緒に歩きたかったというのです。また月1度の贅沢が床屋に行くことだという男性は、行きつけの床屋が閉まってしまうことに悩んでいました。彼は言語障害があり、新しい床屋に自分の好みの髪型を上手に伝えられるか悩んでいたのです。この場合もボランティアの力をお借りして、彼の意志を伝えてもらいました。施設は安全性を第一に、また何といっても多忙ですから、個々の入居者のニーズになかなか応えられません。このニーズに応え、個々のQOLを高める大きな役割をボランティアが担っています。」